ラスト・エピソード 〜星月夜のオルゴール〜
・・あの空のどこかに 君はいるのかな
星月を見上げて そんな事を思うよ・・
キノール「フィール、・・風邪引くよ?」
クリスケ「・・えっ!?あっ、ごめっ・・。
えと、もうちょっと星見てから降りるよ。
みんなにも、そう言っといてくれる・・?」
キノール「・・そか、分かった・・風邪引かないでね?」
それだけ言って、屋根の扉を閉める。
キノール「みんな、ごめん、説得失敗した・・;」
ターベル「・・やっぱり、今日もだめか・・?」
キノール「あんな目でこっち見られると、戻れって言うほうがキツいよ・・。
というか、フィール、歌が筒抜けで聞こえてるの知ってるのかな・・」
テレック「知らないに一票」
クリース「同じく・・」
キノール「ここ一ヶ月、毎晩ああだもんね・・」
あれから、一ヶ月。
都は、女王の言ったとおり、人が住めない状況になっていた。
でも幸い、戦いの前に街の人は避難していたので、被害は0。
付近の村に散って、暮らしているという。
そして、勇者たちは、・・一度は、自分たちの故郷に戻ったのだが。
英雄として大騒ぎされ、ものすごく大変なことになってしまったので、
村の復興が終わってすぐ、こちらへと戻ってきてしまった。
それは他の勇者もまったく同じで、今現在、彼らは都から少し離れた場所で、
小さなツリーハウスを建てて、そこで一緒に暮らしている。
また、あのもう一人の自分たちからも、スターストーンを隠したと連絡があった。
「たぶん1000年ぐらいたったら嫌でも呪いは解けるだろうから、
そうしたら思い切り遊びほうけるのさぁ!ハッハッハー!」
・・との、頭が痛くなるような伝言もあった。
それを聞いたテレックは、実際・・撃沈していた。
その手紙の送り主が、自分の、「もう一人の自分」だったからである。
そして。
キノール「やっぱり・・平気な顔していても、心の傷は深いよね・・」
テレック「・・ああやって無理するのも、よせって言ってるんだけどなあ・・」
全員が、知っている。
夜、こっそり屋根の上に上っては、仲間が一人で泣いているのを。
ターベル「・・あ。そうだ、さっきカインドがいないときに、星々の国から連絡があったぜ」
キノール「・・え?」
あの後、夜明けと共に、プレアたちは国に帰っていった。
満月の時には遊びに来るから、と笑いながら。
リームも、そこで一緒に暮らすのだ、という。
なぜか、テレサルまで国に残ったらしい。
ターベル「『今日は満月の晩だから、そっちに遊びに行きます』ってさ。
・・フィールにも言っといたほうがいいんじゃないか?」
キノール「だね・・。あ、ちょっと待って・・。歌が聞こえなくなったから、
今泣いてると思うから、もう少し後で・・」
慰める言葉など無いことは、とっくに分かっているんだから。
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クリスケ「・・・っ、あー、もうっ!
いいかげん乗り越えなくちゃいけないのにっ・・」
夜空を見上げて、はぁ、とため息をつく。
——・・そろそろ、心配してるかな・・
いくらなんでも、「星が見たいから」という理由で
何時間も外にいるというのも不思議がられてしまうだろうし。
・・それに、自分がどうして毎晩星を見に外に出ているのかも、悟られてしまうかもしれない。
・・心配させるのもよくないよね、と呟いて、
くるりと夜空に背を向けた、その時。
・・・ごっつぅん!!
突然、後頭部になにかが直撃し、顔面から派手に転ぶ。
クリスケ「・・ったぁあ!?なっ、なに!?」
「ぁう〜・・;着陸失敗したぁ・・」
クリスケ「えっ・・あれっ!?」
目の前で、自分と同じく頭を押さえている、あれは。
「あ、久しぶり、フィール!
今日は満月の晩だから、待ちきれなくてボクだけ先に来ちゃった!」
クリスケ「スターライト・・!?」
スターライト「え?ボク達が来るの、ちゃんと知らせておいたのに・・。
そんなにびっくりしなくても」
ひゅん、とスターライトが、顔の前に飛んでくる。
そして、自分を眺めて、首をかしげた。
スターライト「ねぇ、また泣いてたの?目が、真っ赤だよ・・?」
クリスケ「・・・っ!!なっ、泣いてなんか・・」
スターライト「というか、みんな知ってると思うけどな・・あ、忘れてた。
早く来た理由、待ちきれなかっただけじゃなくて・・
はい、預かりもの」
渡された、それは。
クリスケ「・・・オルゴール?」
スターライト「うん、なぜか今日、宮殿の前に落ちてたんだ、ってプレアに渡されたの。
「フィールへ」って書いてあったから、たぶんキミへの」
クリスケ「・・ありがと・・」
ひょい、とスターライトが浮かび上がる。
スターライト「・・まだ元気ないよね?
あのね・・一応、カインド達にも声かけてくるから・・
そのオルゴール、聴いてみたらどう?
あ。あとねぇ・・プレア達がなんかカード挟んでたみたい」
クリスケ「カード?」
スターライト「ボクには詳しく教えてくれなかったけど。
それじゃ、また後で」
すい、とスターライトがツリーハウスの窓から中に入っていく。
・・嵐みたいだったなぁ、と思いながら、オルゴールを開いた。
流れる、その曲は。
クリスケ「・・・!・・星月夜の・・詩・・?」
ぱさり、とカードが落ちる。
そのカードに目を留めたフィールは、息を呑んだ。
クリスケ「・・・!!」
ばっ、とオルゴールを抱いたまま身を翻して、地上に飛び降り、一目散に駆け出す。
クリース「・・フィール!?」
窓から、仲間たちが身を乗り出す。
・・今しがた、バッチリ聞こえていたスターライトのセリフに、
フィールは今傷ついてるんだからそっとしておいてやれ云々、・・と説教をしていた所だったのだが。
ターベル「・・どうしたんだ?」
キノール「あー、やっぱり、スターライトが邪魔したからとか」
スターライト「ボッ!ボクのせいなのっ!?」
テレック「・・とりあえず、追ったほうがいいんじゃないか?」
こくん、と頷いて下に降りる扉をあける。
駆け抜けたフィールの行く先には、大きく浮かんだ満月。
そして、その夜空には流れ星が舞っている。
スターライト「今日って・・流星群の日・・だったっけ・・?」
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流れるオルゴールの音色に合わせて、流れ星が流れてる。
たぶん・・この、星月夜の詩の力・・かも。
とにかく・・とにかく、あのカードに書かれていた事が、本当だとしたら・・!
走りながら、オイラは、もう一度あのカードに目を走らせた。
ガレキで、都はすごく走りにくいけど・・今は、それどころじゃない。
曲がり角を曲がって曲がって・・。
・・見えた!
オイラ達が・・この世界で、初めて出逢った場所・・。
あの、噴水広場。
・・す、すごい、あの広場に向かって、星が一斉に流れてる・・!
オルゴールのふたに刻まれた言葉が、星明りを反射して、光った。
解き放たれた魂は、 夜の空の星になる。
自分の友達が道に迷わないように、 そうして暗い夜を照らす。
友達の願い事を叶えてあげたいから、 星となって願いを聴いている。
いつまでもいつまでも、 星となってその人を見守っている。
そして。いつか、流れ星となって、
地上の世界に帰ってくる・・。
クリスケ「・・着いた・・!!」
ぜぇぜぇと荒い息を整え、辺りを見回す。
いるはずの人物を目で必死で探して、探して・・。
随分そうしていて、・・やがて、肩で息をしながら、呟いた。
クリスケ「・・いない・・」
ああ、やっぱり。
がっくりとうなだれて、崩れかけた噴水の縁に座り込む。
やっぱり・・、本当のことじゃ、なかったんだ・・。
信じなければ、よかった。
奇跡が・・奇跡が、起こるのではないか、と。
・・帰って、くるのではないか、と。
・・オルゴールが、止まった。
それでも、澄んだ音を立てて、流れ星が降っている。
もう一度だけ、カードに目線を落とす。
本当のことだったら、よかったのに。
本当のことだったら・・。
クリスケ「・・帰ってきてよ・・っ」
カーレッジが帰ってくる、と。
カードのその言葉が、本当だったら、どんなによかっただろう。
・・ぽたん、とカードに雫が落ちた。
しゃらん、と澄んだ音を立てて、流れ星が、降っている。
ああ、そういえば。
以前も、こんな事があったっけ・・。
『・・うわっ、今回の流星群はまたすごいねぇ・・!』
『ちょっと、フィール、感心してないで、きちんと数数えてる?
記録して残さなくちゃいけな・・』
『あーっ!!そっ、そんな事言うから分からなくなったぁあっ!』
『・・ローズマリー様に怒られても知らないよ、僕は』
『ひっ、ひどおおぉいっ!!
分かってるってば、天文の資料として残すのは分かってるってば!
ローズマリー様は、そんなことで怒ったりしないしっ!!』
『・・あーあー、はいはい。ウィズ、今ので78個目だぜ』
『・・だってさぁ・・流れ星っていつみてもきれいだしさ・・』
『・・ま、その気持ちも分からなくもないけどな。
なんでも、流れ星ってのは・・』
「・・奇跡を届けるために、流れるっていうからな」
・・・・・・!?
「そう、ちょうど今みたいに・・」
恐る恐る、顔を上げる。
そして、目の前にいる存在が信じられなくて、目を見開いた。
こつん、と胸元の二つのペンダントが揺れる。
「・・ただいま、フィール」
奇跡が、起こるなら。
クリスケ「・・ま・・」
この涙が、空の輝きになるのなら。
クリスケ「・・また・・会えたね・・っ!!」
遠くから、二人の名前を呼びながら駆け寄ってくる四人の勇者たち。
嬉しそうに笑いながら、走ってくる三姉妹と、夢の雫国の女王。
驚いている星の子と一匹のテレサ。
それに答えて手を振ると、二人は、仲間たちの元に、走り出した。
一緒に、笑いあいながら・・・。
ひらり、と一枚のカードが落ちる。
そのカードには、星明りのインクで書かれた名前が、四つ。
流れ星の光を反射して、カードがきらりと光った。
カードの表には、大慌てで走り書きされた、
『カーレッジが、帰ってくるわよ!』
との、おそらくウィッシュの書いたであろう言葉。
そして。
風で、ふわりとカードが開く。
『・・・この奇跡は、私たちからの贈り物。
この世界を守ってくれた、あなた達への感謝の心です。
このオルゴールが鳴り響くとき。
・・それは、ひとつの魂がよみがえる時。
あの後・・落ち込んでいるあなたを見て、私たちは、星神さまに会いに行きました。
そして、認めていただいたのです。・・特例、として。
フィール。
カーレッジはもう、魂ではなく。
あなた達と何一つ変わらない、命です。
これから、私たちもそちらに向かいます。笑顔で、迎えてくださいね。
あなた達に祝福を。
ホープ プレア ウィッシュ スタース 』
天頂近くの満月は、一ヶ月前と少しも変わらない優しさで、地上を照らし出していた。
夜空に輝く星が、きらめく。
地上の人々の道しるべで、あるように。
夢や希望を、見失ってしまわないように。
風に乗って、オルゴールの音と、本当に嬉しそうな笑い声が、夜の都に、響いていった。
星明りが、この世界の希望を照らし出してくれますように。
Fin
そして、エピローグへ・・