ファイナルステージー4 藍色のきらめき、指きりの約束・・Promise
カゲの女王「おの・・れ・・っ・・!!」
カゲの女王・・否、
カゲの女王が憑依していたローズマリー女王の体から、黒い影が立ち上る。
そして。
ドサッ・・。
女王が倒れたのを見届けたとたん、かくん、とウィッシュが膝をついた。
ウィッシュ「・・・終わった・・の?」
ホープ「た・・、多分・・。それより・・も・・、リームは?」
キノール「待って・・。・・・!よかった、息はしてるみたい・・!
女王が・・出て行ったみたい、・・生きてる・・!!」
プレア「よかった・・。じゃあ、これで終わったのですね?
待ってて、みなさん、今祈りの力で回復を・・」
ほっ、と全員が胸をなで下ろした。
・・しかし。その時・・。
・・カシャン・・・。
ターベル「何の音・・。
・・・っ!おまっ・・!?」
落ちたのは。
ホープ「・・っ!!」
クリース「やっぱり・・、あんな、ムチャするから・・!
早く、早くフィールの中に・・!
女王は倒したけど、どのみち、それじゃ消滅するぞ・・!
カーレッジ!!」
落ちたのは、支えを失った、星流・・。
国王『・・まいった、倒したと思って気を抜いたから・・。
臨界点、超えちゃった・・かな』
テレック「ばっ!バカなこと言ってないで、早く戻れ!
今なら、まだ・・!」
国王『・・・』
無言で、首を振る。
そっと持ち上げた自分の手は、ほとんど透けていて。
手のひらの向こうの、仲間たちの顔が、はっきり見えるほどに。
国王『・・ごめん、・・間に合わなかった。
今、フィールの中に戻っても・・、この状態じゃ、留まりきれない・・』
ウィッシュ「それ・・それって・・そんなの・・!!
・・どうして・・どうして、こんな事・・!?」
国王『・・覚悟は、してた・・』
ウィッシュ「どうしてよ・・!!なんで、そこまで無理して・・!
覚悟もなにも・・。カーレッジ、あなた、分かってたんでしょう!?
あんなにも大きな力を使ったら、消滅するって・・!!
なのに、なのに、・・なんで、なんでそんな平然としてんのよっ!!
どうして・・!
ちょっとフィール、あんたも黙ってないで、なんか言いなさいよっ・・!!」
クリスケ「・・・それは」
ずっと、黙っていたフィールが、ようやく顔を上げ、口を開く。
でも、その声は。
さっきまでの泣きそうな声でもなく、震えた声でもなく。
凛とした、強い声。
クリスケ「・・それは、カーレッジが決めたことだよ」
ウィッシュ「そっ・・!?」
・・だから。
クリスケ「だから・・いいんだ」
そう言って、くるり、とカーレッジに向き直る。
クリスケ「・・あの時も、言ったよね・・?」
自分をかばって、倒れた親友。
ちょうど今のウィッシュのように、どうして、と繰り返す自分に、カーレッジは、言った。
自分が、そう決めたから、だと。
国王『・・ああ・・』
クリスケ「あのさ・・消滅しちゃったら・・。
カーレッジ、天国にも行けないの・・?」
国王『・・魂が消えたら、どうなるのか・・。
それは、私にも分からないが・・おそらくは』
クリスケ「そっか・・」
一瞬、瞳が揺れる。
慌ててごまかすように下を向いて、呟いた。
クリスケ「じゃあ・・生まれ変わるのも?」
国王『・・・』
——もう二度と、会えないの?
そう口走りそうになって、下を向いたまま、きつく目を閉じる。
・・そんなこと、言ったら。
あの時みたいに、きっと困った顔で、慰めてくれる。
そうしたら、・・絶対に、自分は、堪えきれないから。
クリスケ「・・・っ」
国王『・・フィール』
クリスケ「なんでも、ないっ・・!
カーレッジ、それなら・・それなら、
最後に、一つだけ・・」
そう言って、顔を上げる。
クリスケ「約束して。
いつかまた、会えるって・・」
国王『・・・』
クリスケ「オイラなら、ずっと、待ってるから!
それに・・一回、約束守れて、奇跡起こせたんだから、
今度だって、大丈夫だよ!きっとさ!
きっと・・また、会えるから・・って・・!」
瞬きをして、ちょっと寂しそうに、カーレッジは笑う。
全く、いつも、いつも、この親友は。
自分ではなく、仲間のことをまず考えて。
それで、自分をないがしろにする癖は、相変わらずそのままで。
それを見て、周りが心配している事にも、いいかげん気づいてもよさそうなのに。
苦笑して、かつてと同じように、小指を差し出す。
国王『・・約束、な』
ゆっくりと、カーレッジの姿が消えていく。
それでも、かろうじて、声だけが響いた。
『・・いつか、また会おう・・』
最後に、藍色のペンダントと、小さな光のきらめきを残して。
さようなら。
・・さようなら、カーレッジ・・
——————————————————————
消えてしまったカーレッジがいた所を見つめて、
ウィッシュが声を震わせる。
ウィッシュ「・・っ、そん、な・・っ、そんなの、ないよぉっ・・!!」
クリスケ「・・これで、よかったんだよ」
その、静かな声を聞いたとたん、ばっとウィッシュが振り返った。
ウィッシュ「・・フィール、どうしてっ!?
あなたとカーレッジは、一番の仲良しだったのに・・
どうして、そんな、平気で・・っ!
カーレッジが・・カーレッジが、かわいそ・・」
キノール「・・ウィッシュ!」
強い口調で、キノールがウィッシュを遮った。
訝しげに振りむくウィッシュに、キノールは、そっと前を指す。
キノール「どうして、フィールがあんな態度をとったのか・・。
それは、フィールなりにカーレッジの事を、考えたからだよ」
ウィッシュ「え・・?」
その言葉を聞いて、ぽつり、とフィールが呟く。
クリスケ「・・かわいそうって・・言ったって・・。
だって、ウィッシュ、一番消滅するのが辛かったのは、カーレッジでしょ・・?
それに、それに、それでも・・カーレッジは、
自分でその事を決めたんだから・・」
だから。
クリスケ「それなら、オイラも、絶対に泣かないって、
今度はちゃんと、笑って、さよならしようって・・。
カーレッジの願いを聞いてから、決めてたから・・」
———世界を、滅ぼさせては、いけない———・・!!
クリスケ「だから・・」
クリース「でも」
そっと、クリースが前に出る。
クリース「それは、フィールの本当の心とは、違うんじゃないか・・?」
クリスケ「・・・っ・・!」
うつむいていた、顔を上げる。
そこにいたのは、心配そうな仲間たち。
・・今までいつも近くにいた一人を、除いた。
クリスケ「そんなこと・・」
ターベル「・・嘘つけ!なら、どうしてそんな、泣きそうな顔してるんだよ?
本当の心は・・カーレッジに、本当の心は、伝えなくてもよかったのか!?
もう・・もう、最後だったってのに・・!!」
その言葉を聞いたとたん、・・ぷつん、と胸の中で何かが切れた。
・・もう、限界だった。
空色の瞳が、大きく、揺れる。
クリスケ「・・そう・・だよ・・」
プレア「フィー・・」
クリスケ「そうだよっ・・!
本当は・・あんな事、言いたくなかったよ・・!!!」
違う。違う。
あんな事が、言いたかったんじゃなくて。
・・本当は・・。
クリスケ「・・・で・・っ」
本当は。
そろそろと落ちていた藍色のスターペンダントを持ち上げて、
ばっと空を振り仰いで、叫んだ。
クリスケ「・・行かないでよ———っ!!!」
ぽたっ、と雫が落ちる、音がした。
—————————————————————
スターライト「・・こんな事って・・」
テレサル「・・でも、あいつも、願いがかなったんだから、いいんじゃない?まだ。
とにかく、間に合ってよかった・・」
スターライト「うん・・じゃあ、ボクらの役目もおしまいだね?
予言も、もう役にたたな・・」
テレサル「・・ちょっと待て?
戦いが終わったにしても・・。この予言、まだ相当な量が残って・・」
スターライト「・・え?今、どこまで予言解読したの?」
テレサル「『輝ける星の光が、闇を退ける。しかし・・』。ここまでだけど?」
スターライト「しかし・・?・・待って、今、何時・・!?」
ばっ、と二人が水鏡を覗き込む。
そこに映る満月が、指し示す場所は。
スターライト「天頂・・。真夜中・・!?」
真っ青になって呟いたとたん、魔法の水鏡が光を放った。
そして。
『・・その先の予言は、読ませぬ・・』
テレサル「なに・・!?」
とたん、水鏡の光が予言の紙へ集中し、紙を燃え上がらせた。
共に残った、その嫌な高笑いは。
スターライト「まさか・・!?」
—————————————————————
『戦いはまだ、終わっていない』
突然頭上に現れた気配に、一同が上を振り仰ぐ。
そこに、いたのは。
『さすがは星の光の産物の力・・。
このわらわに、ローズマリー女王の体に留まれないほどのダメージを与えるとはな。
だが、それでもわらわはここにいる・・。
やはり、倒れるのはお前たちじゃ・・!!!』
ああ、神さまがこの世にいるのなら。
泣きそうになりながら、ウィッシュは思う。
どうして、こんな事をするのですか?
そこにいたのは、魂の姿となったカゲの女王と、
捕らえられた、ローズマリー女王の魂だった。
ファイナルステージー5 真夜中の予言、重なる魂・・soul
ウィッシュ「なん・・、どうして・・っ!」
ホープ「大丈夫、魂だけの身には、攻撃手段はないわ!
今の私たちなら、もう一度あの力で・・!」
『・・ほう?そのような事が主らにできると・・?
おもしろい。して・・』
すい、と女王の視線が動く。
その視線が指すのは、落ちたままの、・・星流。
『・・その剣は、いったい誰が持つというのじゃ?』
クリスケ「・・・っ!」
『わらわがなぜあの王を最初に葬ったか。
その答えが、ようやく分かったか?愚かな勇者たちよ。
あの王も、わらわの企みに気づかないとは、ずいぶんと堕ちたものじゃ・・』
ターベル「こ・・のっ・・、なんだと・・!?
人の仲間に対して言いたい放題言いやがって・・っ、
いい加減にしろ!!ライジングキッ・・」
『・・わらわはかまわんが、もし少しでもずれてしもうたら
お主たちの女王の魂が消滅する事がわかっているか?
現に、その疲れ果てた体で正確な攻撃ができるとは思わんが・・?
わらわは今、実体化と似たような状況にあるゆえ、
一度くらいの攻撃ではなんともないが、お主たちの女王の魂は一度でも持つまい・・』
ターベル「・・っ・・!」
先ほど、闇の刃が直撃した所を押さえる。
今の自分には・・確かに、正確なキックができるとは思えない。
ただでさえ、立っているのがやっとなのだから。
ターベル「ちく・・しょおっ・・!!」
そのとき。
カゲの女王が捕らえているローズマリーの魂がほんのりと光った。
『シェンス・・ッ!私はかまいません、ためらわないで・・!
私のことよりも、カゲの女王をっ・・!
あなたは、あなたは、いつだって諦めない心を持っているんですから・・っ!』
ウィッシュ「・・リーム!?話せるの!?魂だけなのに・・!」
『ほう・・さすがはローズマリー、魂だけでもそこまでの力を持つか・・。
・・勇者達よ、もう一つ、主たちの愚かな所を教えてやろうか?
そこの小娘が言ったように、確かにわらわ一人の力では、何もできぬ。ただし・・一人では、じゃ!』
ぐいっ!
『・・いやっ・・放してっ!放して——ッ!!』
女王が、ローズマリーの魂を前へと突き出す。
キノール「ローズマリー様・・っ!?」
『放しっ・・放すのです、カゲの女王・・!!』
『偶然とはいえ、わらわの魂とお主の魂が共にローズマリーの体から出てしまったとは運がよい・・。
わらわにとっては、じゃがな。
お主のような強い魂の力ならば、物理的な攻撃も可能・・』
『私が・・あなたに力を貸すとでも思うのですか!?』
『思うわけ無いじゃろう?
じゃが、・・使わせてもらおう』
ふっ、と女王が気味の悪い笑みを浮かべる。
その瞬間、どこか遠くで、時計の鐘の音が鳴った。
きっかりと、12回。
とたん、女王の周りを黒い影がとりまく。
『・・・っ!?』
『真夜中・・。闇の力が最も強まるとき・・。
・・そう、世界が、滅ぶ時———!!』
ゆらり、と影が立ち上る。
『やめっ・・逃げて————ッ!!!』
刹那。
都を呑み込むほどの大きな力が、爆発した——・・。
バァンッ、と音を立てて水鏡が砕け散る。
テレサル「・・しまった・・!これは・・
夢の力か・・!?」
スターライト「どういうことっ!?
夢の力には、物を傷つける事はできないって、フィールは・・!」
テレサル「カゲの女王が、夢の力をいいように操ってるに違いない!
くそっ・・鏡が割れるほどの力だ、何が起こったか・・!」
スターライト「・・待って!割れた鏡の破片に、何か映って・・、・・っ!?」
そこに映る光景をみて、テレサルが息を呑み、青ざめる。
テレサル「・・都が・・!?」
弾き飛ばされた勇者たちを見下ろして、女王が低く笑う。
真上からの満月の光を浴びて。
手の中のローズマリーの魂は、ほとんど光を失っている。
テレック「あ・・ぐっ・・、なに・・を・・!?」
『・・そろそろ、お主たちも限界が近いのではないか?
どうやら、先ほどのわらわへの攻撃で力を使い果たしたようじゃと見るが』
ぼんやりと、視界が霞む。
光の魔法を使った代償を、いつまで延ばせられるか。
そう思いながらも、必死で顔を上げる。
テレック「・・質問に、答えろ・・!!」
『・・この女王の力を使わせてもらい、夢の力を悪の力として爆発させた、それだけじゃ。
素晴らしい・・これ程までの力・・。
・・質問ついでに教えてやろう。今の力で、都は崩壊し、呪われた』
一同が、息を呑む。
プレア「まさ・・か・・!あの、予言の・・。
満月が・・天頂高く登るとき起きる、とてつもなく恐ろしい事・・。
それが、今の力だと・・いうのですか・・!?」
『その通り。
この後当分、都には誰も近寄れなくなることじゃろう。
呪いの証として、都には闇が立ち込める。
それに・・地下部分はまだ家屋が残っているようじゃが、地上に残っていた部分は、・・全壊したようじゃな・・』
ターベル「全壊・・!?あの都が・・!?」
キノール「そんっ・・な事・・!」
『信じない、と?
何度も言わせるでない・・都は滅びた。
わらわ達のおる場所は、崩れない程度に手加減しただけのこと・・。
まぁ、いつまで持つかは知らぬが』
ウィッシュ「そん・・な・・!」
『これはただの始まりじゃ・・。
ゆくゆくは、この世界の全てが、この都と同じ運命を辿るじゃろう。
そうじゃ、あの時と同じように。そしてまた、お前たちもな・・!
あの葬った王の願いも、今となってはただの・・』
——・・キィイーンッ!!!
バシィッ!
『・・っ!?』
クリスケ「・・させない・・」
きっ、と顔を上げる。
クリスケ「全力で・・止める・・っ!!」
だっ、と女王に向かって駆け出す。
その体に、ペンダントの光が宿った。
・・あの時、試練の森での最終試練の時と、同じように。
最高必殺技。
クリスケ『フィーリングソウル———!!!』
ファイナルステージー6 思いの木霊、守りし者・・Defense echo
『ちっ・・!!』
女王の舌打ちと共に、
夢の力・・影のオーラが立ち上る。
パァアンッ!!
放たれた力を弾き飛ばしたオーラが掻き消え、魂の姿であるカゲの女王が、揺らぐ。
・・しかし、それだけ。
『なかなかの力・・しかし、わらわには及ぶまい。
・・食らうがいい!』
ゴォッ!!!
クリスケ「・・・っ!!」
・・ばぁんっ!!
クリース「フィール!!」
カゲの女王が放った影のオーラに弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
慌てて駆け寄ったテレックが、さっと青ざめた。
テレック「まずい・・!・・意識がない・・!!」
ウィッシュ「嘘でしょっ!?」
ターベル「くそっ・・フィールを頼む!」
いざという時に、手当てをしている仲間をかばえるように、
ターベルとクリースがざっ、と前に出る。
女王と目線を外さないまま、ターベルが呟いた。
ターベル「フィールの、あの力まで・・。
あんなにあっさり、弾き飛ばして・・!?」
クリース「魂の体では、逆に普通の攻撃では効きにくいみたいだ・・!
それに、ローズマリー様の魂の力で、私たちの力がよけい削がれてる・・!!」
キノール「・・フィール、フィール、しっかりっ!」
プレア「・・任せて下さい、私の、祈りの力で・・!!」
その言葉を遮って、女王が腕をあげる。
『そろそろ、終わりにしよう・・。
星々の魂の小娘、邪魔はさせぬ。・・いでよ!!』
足元の床が、ゆらり、と揺れた。
ウィッシュ「なっ・・なに!?」
ターベル「これ・・!危ない、気をつけ・・っ!!」
ビュルルルルッ!!
——現れたのは。
ホープ「・・カゲの手!?」
『シャドープレス・グラビティ!!』
ずぅんっ!!
女王の唱えた呪文に合わせて、
伸び上がったカゲの手が絡みつき、一同を引きずり倒す。
ターベル「・・・っ!?」
キノール「な・・んっ・・なに、これっ・・!?
立て・・ないっ・・!」
テレック「その・・魔法・・!
この、カゲの手と・・闇のオーラか・・!!」
ウィッシュ「ど・・いうこと・・!?」
『そこで永遠に、動きを止めていてもらおう。
そのカゲの手が絡みついている限り、動くことは不可能じゃ』
クリース「な・・っ!」
『そう、永遠に・・』
かかげた、右手。
その中にあるのは、弱々しく光っている、ローズマリーの魂。
『終わりじゃ——————!!!』
ウィッシュ「・・・・・!!」
そんな、ここまで来たというのに。
こんな所で・・最終決戦の地で、終わってしまうの?
世界は、滅びてしまうというの・・・・!?
女王の手から、女王の手の中のローズマリーの魂から、
すさまじい勢いで闇色の衝撃波が放たれる。
動けない一同へと、一直線に・・。
刹那。
『——————!!!』
一筋の、光の風が駆け抜けた。
高い音をたてて、カゲの手のかせが、弾け飛ぶ。
放たれた大きな力を、走った星の光の軌跡が、打ち消す。
あれは。
『貴様・・なぜ!?』
ウィッシュ「うそ・・!!」
プレア「・・っ、今、勇気ある者たちに祝福を———!!」
一瞬の隙をついて、プレアが祈りの力を解放する。
クリスケ「・・・、ぅ・・」
クリース「フィール、大丈夫か!?」
クリスケ「みん・・な・・?どうし・・、・・っ!?」
自分たちと、女王の間にいる、光。
その姿を認めて、絶句する。
一方の女王は、目の前に現れた存在を眺めて、皮肉に微笑み、呟いた。
『・・この地に焼きつき、残った心というわけか・・。・・おもしろい』
星流・・否、星流の幻を横に広げて構え、
仲間達を守るようにを立ちはだかる、光。その光は・・
クリスケ「カーレッジ・・!?」
消滅、したはずの。
———カーレッジの、姿をしていた。
ファイナルステージー7 一つの呪文、そして・・願う者、wish
クリスケ「カーレッジ・・なの・・!?」
ふわり、と光が揺れた。
カゲの女王が、再び手を振り上げる。
『・・ふん、邪魔者は・・消し去るのみ!!』
ザアァッ!!
・・ぱんっ!!
『なんじゃと・・!?』
放たれた闇の刃が、光に弾かれて、掻き消える。
クリスケ「・・どういう・・こと・・!?」
ホープ「あれって、・・カーレッジ!?
でも・・なんだか、幻みたいな感じが・・」
クリース「・・あれは・・、・・まさか!?」
ターベル「なにか知ってるのか?」
クリース「以前、ふしぎの森にいた時に・・、
一冊の、古い古い文献を読んだことがあるんだ。
そこに、こんな記述があって・・。
『人の心根からの思い、その重さはいざ知れず、その強さもまた然り。
その思い永久に大地に残り、時を越えて受け継がれゆく。
その思い呼び覚まされし時、思いは輝く光となり解き放たれる。
光は、その思いのように決して消えることはなく、
全ての攻撃はその光の前に掻き消えてしまうという。
それはいわば、希望の光、その者の木霊。
しかし、この世に生きる者、それを見し存在は無いという・・。
我らに伝わる、神の世からの伝説なり———・・』
・・ひょっとして、ひょっとしなくても、あれが・・そうなんじゃ?」
キノール「それじゃあ・・!」
クリース「とはいっても、その人の心が形になったような物だから、
話すことも、意思の疎通も無理だ、っとも書かれてるんだけど・・」
テレック「・・とにかく、まだ、希望が残されてる・・って事だな?
それなら・・!」
クリスケ「・・待って!」
呪文を唱えようとしたテレックに、制止の声がかかる。
テレック「なん・・」
クリスケ「フォース達も見たでしょ?
・・ローズマリー様がいる限り、オイラ達の攻撃は・・ううん、・・最高必殺技ですらも効かないよ・・!
オイラのも・・あっさり、掻き消されちゃったもの・・」
テレック「・・・!」
ターベル「げっ・・それが残ってたか・・!
どうするんだ、防御しかできないんじゃどうしようもないぞ・・!」
クリース「防御しか・・?」
ふと、耳に残るものを感じて、記憶をたぐる。
そして、・・思い出した。
ついさっき、・・自分から離れた場所で、叫ばれた言葉。
——今の私たちには、防御しかできない・・!
——よく聞いて、さっきこの本で、一つの呪文を・・
——悪しき者を封ずる呪文、マジック・オブ・スィール・・!!
封印の呪文。
クリース「・・突破口は・・ある!」
そう呟くなり、ばっ、と三姉妹を振り返る。
ウィッシュ「えっ・・なに?
・・って、後ろっ!!」
クリース「・・っ!?」
ドォン・・!!
間をぬって放たれたシャドーボールで、柱が倒れる。
なんとか間に合ったスターリングとタロットが、
浮かび上がらせた紋章を挟んで、ガレキを受け止める。
ホープ「ちょっ・・あなたねぇ、よそ見してる場合じゃないでしょっ!?」
クリース「す、すまな・・。・・違った、・・プレア!
それと、ホープ、ウィッシュ!突破口が・・うわっ!」
ドオォンッ!!
クリース「シャドーボールが多すぎる・・!」
ホープ「カーレッジ・・の思いだか木霊だかなんだか知らないけど、
あれでも全てを防ぐことは無理みたいね・・。
ちょっと待って!・・みんな、一旦こっちへ!」
仲間が集まったのを確認して、
シャドーボールを弾きながら、ホープがリングを空高く投げ、叫ぶ。
ホープ『ホーリー・スペース!』
リングを沿うようにして、ぼんやりとした光の壁が現れる。
ホープ「結界を張ったわ!
これで、・・ほんのちょっとだけど、女王の攻撃は防げるはず・・!
外に声も聞こえないはずよ!
こっちからも外が見えないけど・・」
プレア「皆さん、ちょっと動かないで下さいね!」
結界が張られたのを確認して、もう一度プレアが祈りの力を解放する。
プレア「これで、大体は・・」
ウィッシュ「よぉしっ、とりあえず作戦会議ね!
・・さっきから結界にシャドーボールがぶつかりっ放しみたいだし、
カーレッジ・・?が、防いでるみたいだけど・・結界が割れるのも時間の問題ね、クリース、さぁ、教えて!」
クリース「・・ああ!
さっきの・・プレア達がマジョリンとマリリンに施した、あの呪文・・。
攻撃が効かなくても、あの魔法は効果があっただろう?
スターストーンの力も使って、もう一度、私たちの力を解放して・・、
カゲの女王を・・、封印すればいい!」
ホープ「・・マジック・オブ・スィールの事・・!?」
テレック「なるほど・・!それなら、確かに・・」
クリスケ「マジョリン達も、あれで封印できたんだし・・。
オイラ達全員の力を合わせたら、できるかも!」
ターベル「さっすがウィズ!それなら・・早いほうがいい、さっさと・・」
ホープ「・・いいえ。できないわ・・」
呟かれた小さな声に、勇者一同が三姉妹を振り返る。
キノール「・・え、どういう事・・?」
ホープ「・・リームよ・・リームが女王の手中にある限り、
封印の呪文ですら弾かれてしまうの!」
キノール「・・うそっ!?封印の呪文まで弾かれる・・!?」
ホープ「私たちには分かるわ・・あの魔法を使ったものとして!
リームさえ・・リームさえ、開放できたなら・・!!」
悔しそうにリングを握り締めるホープの横で、
ぽつりとプレアが呟く。
プレア「それに・・まだ、あるんです・・!」
そっと、胸元にあるスターストーンを指差す。
プレア「スターストーンの力が・・。
先ほど手にして、分かったんです。
長い間女王と共にあったスターストーンの力は・・
完全ではなくなっている、汚されています・・!!
もしリームが開放できたとしても、これでは・・」
クリスケ「そんな・・!!それじゃ・・」
・・パアァンッ!!
キノール「・・っ!?」
ホープ「大変っ!結界の効力が切れたわ・・!
みんな・・みんな、散って!」
ドオオォンッ!!
クリスケ「わぁあっ・・!!!」
ウィッシュ「・・・!!」
切れた結界の壁の向こうがわで、・・女王は、待ち伏せをかけていた。
攻撃をまともに食らったフィールが、後ろに吹き飛ぶ。
光が走り、次の攻撃をカーレッジの木霊が弾き返し、吹き飛んだフィールを受け止める。
テレック「ちょっ・・しっかり!
・・フィール、まだ回復したばっかりだったから・・!!」
キノール「また、気絶しちゃってる・・!
フィールをお願い、今度は僕が・・!」
女王に向き直り、改めて広間を目で見回す。
ほんの少しの間に、ガレキだらけになった広間。
その時、ふと、女王の右手に目を留めた。
女王の手の中にある、ローズマリーの魂。・・あれは。
キノール「ちょっ・・あれって・・!?」
ウィッシュ「・・闇色・・!?」
『・・気づいたか、星々の魂の小娘よ!
ローズマリーの魂が闇に染まるのも、時間の問題じゃ・・!』
ターベル「カゲの女王のしわざか!?闇に染まるって・・どうする気だ!?」
ウィッシュ「そんな事・・あたし達が許すと思うの・・っ!?」
声が恐怖で震えている。直感で、分かる。もしもローズマリーの魂が完全にカゲの女王の物となってしまったら。
・・立ち向かう術はない。
こんな時、どうすればいい・・。
——・・の・・。
頭の中で、自分が言った言葉が、木霊する。
——・・あたしは、願う者。
ウィッシュ「助け・・」
・・お願い・・。
ウィッシュ「誰か、力を貸して————っ!!!」
—————————————————————
割れた水鏡、
・・あれきり、ちらりとも映像が映らない水鏡を覗き込んでいたスターライトが、ばっと顔をあげた。
スターライト「・・ウィッシュ!?」
テレサル「どうした?」
スターライト「・・テレサル、地上が大変だよっ!
ウィッシュの・・ウィッシュの、願いが聞こえる・・!!
力を、貸してって、叫んでる・・!」
とたん。
キラキラと、スターライトが光りだした。
光の粒が、輝いて宙を舞う。
スターライト「うわっ、なに、これ・・!?」
テレサル「・・それ・・!?光り輝く星の・・まさか!」
スターライト「ふぇ!?ちょ、ちょっと待って、まさかって、なにが・・」
テレサル「・・オレが、夢の世界で見たもの・・。
たくさんあったけど、その中の一つに、こんな物があった。
ローズマリー女王の、・・未来夢!」スターライト「未来夢ぅ!?」
テレサル「・・今、思い出すと・・あの、夢の中の紙片・・。
くそっ、もっと早く気づいてもいいものを・・!
夢の中で、オレが見たのはあの予言の一部だったのか・・!」
スターライト「話についてけないんだけど・・!予言だか未来だか知らないけど・・説明して!」
テレサル「・・あの夢の中で、一枚の紙をみた・・。そこに、こんなことが書いてあったんだ・・!
『光り輝く星の子、希望となり、地上を照らす。
小さな希望の光、闇を照らす道しるべとなれ、希望の歌となれ。
地上に響くのは・・っ』
・・ちっ、ここから先は覚えてない・・!所詮は夢の中か・・!」
スターライト「ぼっ、ボクぅ!?希望の歌って・・言われても・・!」
ふと、スターライトの言葉を聞いて、テレサルが眉をひそめる。
・・どこかで、同じ言葉を耳にしなかったか。
ぶつぶつとスターライトの言葉を繰り返し、目を見開く。
テレサル「・・希望の歌って・・。・・希望の歌・・!?
それだ、確かどこかで読んで・・!そうだ・・、城の文献にそんな表現が・・!」
スターライト「・・?」
テレサル「『星の輝きを清め、その輝きをより一層輝かせる希望の歌・・星月夜の・・』
スターライト!・・この国に、星月夜の詩という歌が、残っていないか!?」
スターライト「ほしづきよのうた・・?知らないよ、そんなの・・!?
プレア達なら、なにか知ってるかもだけど・・連絡が・・!
・・それから、この光、何・・!?
どんどん強くなってるんだけど・・!
それから、ウィッシュの願いの声も・・!」
そう言っている間にも、スターライトの周りの光は、輝きを増していく。
一つの事を思い出して、ぽんと手を打った。
テレサル「・・そうか!星の子の力の源は人々の願い・・。
スターライト、今のお前にならできる!
鏡はいらない、地上へ声を伝えるんだ!
星月夜の詩・・これが、きっと鍵になる・・!」
スターライト「でっ・・でも、どうやって・・!?
ボク、そんなのやった事、ないよ・・!」
テレサル「・・やればできる、・・信じればいい・・!」
しばしの沈黙の後、必死で地上に祈りはじめたスターライトを見ながら、
テレサルはふっと遠い目をした。
・・ローズマリーに「あの夢」を見せてもらうまで、忘れていたこと。
思い出せたからこそ、昔の自分には言えなかった言葉を、今はこうして叫ぶ事ができるのか、と。
—————————————————————
『ウィッシュ————ッ!!!』
ウィッシュ「・・・っ!?」
突然、スターペンダントから響いた自分の名を呼ぶ声に、息を呑む。
ウィッシュ「・・ス、スターライト・・!?」
ターベル「またなにか連絡か!?
・・ウィズ、フォース、そっちは頼む!
オレ達は女王を食い止めてるから、そっちの事聞いといてくれ!」
ウィズ「分かった!
・・スターライト、どうしたんだ・・!?」
『力を、貸してって、お願いしたでしょう!?
あのね、知らせることがあって・・!
ウィッシュ、ホープ、プレア、・・星月夜の詩って知っ・・』
言葉が最後まで終わらないうちに、三姉妹がばっと身をのりだした。
プレア「・・星月夜の詩!?
スターライト、どうして、あなたがそれを・・!?
それは、あなたがまだ生まれる前、私さえ生まれていない頃の、
とてもとても古い時代の・・それこそ、神話の時代のものよ・・!?」
ウィッシュ「星月夜の詩って・・伝え語りでしか知らないけど、
確か、星神さまが造られた歌よね?どうして、それが今必よ・・」
『あのね、テレサルが言ってて・・星月夜の詩は、
「星の輝きを清め、その輝きをより一層輝かせる希望の歌・・」
・・なんだって。
ボク達、鏡が割れちゃって、そっちの事全然分からないけど、なにか力になるような事は・・』
クリース「星の輝きを清める、って・・!
もしかしたら、・・スターストーンも、それなら・・!!」
プレア「その歌にそんな力があったなんて・・!それなら、きっと・・!」
『・・なんとかなりそう!?』
ウィッシュ「うん、なりそ・・」
しかし。
その声を遮る、震えた一つの声。
ホープ「・・っ、神さま、今回ばかりは貴方を恨みます・・!!」
ウィッシュ「ねっ、姉さん!?・・なんで泣いて・・!?」
ホープ「・・あなた達は知らないだろうけど・・!!
星月夜の歌は、・・遠い昔、永遠に失われてしまったわ・・!!
昔、ずうっと昔、まだ私が生まれたばかりのこと・・。
星神さまは、そうして造られた歌を地上へと、地上の一人の人間へと、託した・・。
でも、その人間は・・、
私でも、今どこにいるのか、子孫が生きているのかも分からない・・・!!」
ファイナルステージー8 失われた唄、星月夜の詩〜 revives
ウィッシュ「なっ・・、それって・・!?」
ホープ「その歌は、特別な魔法がかけてあって、一度聴いたら忘れない歌。
でも、それが現在まで伝わっているとは、限らないわ・・!
それに、もしもスターストーンが完全になったとしてもよ、
リーム・・リームが、いる限りは・・きっと、無理だわ・・」
そう言って、カゲの女王に向き直る。
その時・・、ふわり、と。少しずつ闇色になっていく、女王の手の中の魂が、揺れた。
『・・・おね・・がい・・・私を・・』
『・・なっ、まだ意思が残って・・!?』
『私を・・解き放ってください———・・!!!』
光の波動が、放たれる。
『なにを・・!!』
放たれた光が触れた場所から、傷や痛みが消えてゆく。
キノール「これ・・この光・・すごい・・!
回復の魔法の光・・!?」
・・ふわん・・。
ウィズ「・・カーレッジ・・?」
突然、飛んできたカーレッジの木霊が、
相変わらず気絶しているフィールの上に手をかざした。
クリスケ「・・・ぅ・・」
クリース「フィール!やっと起きて・・」
ぼんやりと辺りを見回して、
闇色になっていくローズマリーの魂に目を留め、息を呑む。
クリスケ「・・本当・・なの・・!?」
クリース「・・え?」
その小さな問いかけは自分へではなく。
目の前に浮かぶ、カーレッジの木霊を見つめて、呟かれた言葉。
カーレッジの木霊が、頷いた・・ような、気がする。
クリース「・・どうした?」
クリスケ「・・あのね、カーレッジの木霊が・・気絶してる間のこと、
イメージで教えてくれた。それから、大切なことも・・」
クリース「・・って・・フィール・・?」
とん、とフィールが前に出る。
カゲの女王をしっかりと見つめて。
『・・なん・・』
クリスケ「あのね、ローズマリー様の魂を解き放つには」
心に、強く強く響くことがあればいいんだって。
あの日の、あの朝の言葉が、よみがえる。
———女王様は・・歌が好きだったからね。
もし、今ここにいたのなら・・。
ウィッシュ「フィール・・!?危ないわ、そんなに近づいちゃ・・えっ!?」
飛び出しかけた自分を、カーレッジの木霊が制する。
その、視線の先では。
フィールは、ローズマリーを見上げた。
そして目を閉じて、息を吸い、口を開く。
「・・星たちの輝きよ 私たちの夢を届けて
満月の光よ 私たちの願いを聞いて
そして感じて 私たちの心を
天空の流れ星は 人々の願いを歌い
揺らめくオーロラは 奇跡を祈るだろう・・」
『・・その・・歌は・・!?』
ホープ「それ・・まさか、どうして・・!?」
「・・どうか 静かな星月夜よ 私たちの想いを伝えて・・」
プレア「・・星月夜の・・。・・詩・・!?」
あの時の歌。
記憶が戻った翌朝、カーレッジが自分に教えてくれた歌。
王家に伝わってきた歌で、決してこの世界から消えてはいけない歌らしい、と。
そして、今では知っている。
この歌が、・・「星月夜の詩」。
「・・その想い紡いだ言の葉よ どうかその人の心へ届いて
心の底からの言の葉は いつもいつまでも響くから・・」
その頃、星々の国。
割れた鏡から聞こえてきた歌声に、驚いた二人が駆け寄る。
再び鏡に映った光景を理解して、メロディを二人で歌いだす。
「・・人の流す涙は 空の輝きとなり 地上の人々に 光を放つ
夢を信じて 自分を信じて と・・
天の川に流るるは 人々の夢 夜の空で夢は光を放つ
その者の持つ心のように・・」
仲間たちが頷いて、フィールの隣へ進み出る。
そっと、フィールがテレパシーで歌詞を教えてくれるから。
「・・どうか 輝く星月夜よ 私たちの夢と希望を照らして
たとえ命は 途絶えても 思いと魂は永久(とわ)のもの
強き祈りと 願う心は いつもいつまでも 輝くから・・」
スターストーンが、輝きだした。
それに呼応するように、ローズマリーの魂も、光を取り戻してゆく。
一人、カゲの女王だけが歌声から後ずさる。
一同の声は、重なり合って、波紋のように、響く。
「・・星よ 星よ 私たちの世界を その輝きで 照らしたまえ
明日を夢見ている全ての人のために
夜の深い闇を打ち消すかのように
星よ 星よ 人の心を その輝きで 満たしたまえ
悪の深い闇を打ち払うかのように
進むべき道を示すように・・」
ローズマリーの魂が、歌っている。
ほんのりと、自分の姿の幻影を浮かべながら。
スターストーンだけではない、スターペンダントも、落ちている星流も。
空気までもが、ほんのりと光を放つ。
そして、その声の中に混じる、聞きなれた声。
「・・星々の清らかな輝きを いつもいつまでも この胸に———・・」
ああ、あの声は。
隣にいる光が、ふっと笑ったように見えた。
そして・・
最後の余韻が、広間に広がっていく。
自分と、仲間たちと、三姉妹と、星々の国の二人と、女王様の声と。
重なった声が、波動となって、広がった・・。
ファイナルステージー9 スターストーン、・・〜 magic of seal 〜
音の波紋が、大きく広がった。
ローズマリーの魂が、女王の手を飛び出し、実体化する。
スターストーンが、大きく光を放った。
『今です・・!』
すっ、と三姉妹が構える。
その後ろで、勇者たちも。スターペンダントが、光を放つ。
・・そして。
胸元の二つのペンダントを揺らして、フィールが顔を上げる。
クリスケ「行くよ・・っ、カーレッジ!!」
ふわり、と星流が浮かぶ。
・・否、超能力で・・、浮かび上がった、夢の雫国のフィールの幻影が、星流を拾い上げ、構える。
自分には、星流の力を発揮させることはできないけど。
カーレッジがいる今なら、きっと。
三姉妹が、ローズマリーの魂を失ったことで無力になったカゲの女王に向かって、手を振り上げる。
勇者たち一同も、声をそろえて、自分の力を爆発させる。
・・たぶん、星々の国のあの二人も。
フィールが、前に飛び出した。
「「「 マジック・オブ・スィール ————!!! 」」」
魔方陣が、浮かび上がる。
星の光が舞い、鐘の音のような澄んだ音が響いていく。
七つのスターストーンが、虹色の光を放った。
『おのれ・・っ、貴様らぁっ・・・!!!』
—————————————————————
この場面・・!
星々の国で、テレサルは息を呑んだ。
スターライト「これで・・これで、終わる・・!」
テレサル「あの未来夢・・」
スターライト「・・え?」
テレサル「まずい———・・っ!!」
鏡を握り締め、一心に呪文を唱える。
届くかどうか、など考えもしなかった。
『・・・・———!!!』
—————————————————————
鐘の音の余韻が、消える。
クリスケ「・・終わ・・った・・?」
へたり、と座り込む。
光が止んだとき、そこにあったのは、黒い棺。
ウィッシュ「・・みたい・・」
キノール「・・終わったんだ・・ね」
かくん、と座って、上を見上げる。
天頂からずれた、満月が、浮かんでいた。
・・この世界は、守られたんだ・・。
リーム『ありがとう・・本当に、ありがとう・・ごめんなさい。
結局、私は、女王に好き勝手使われて・・』
ウィッシュ「ううん・・リームが無事でよかった」
微笑んで、プレアが棺を振り返る。
プレア「・・とりあえず、封印はこれで大丈夫です・・。少なくとも、1000年間は。
私たちも、地上に戻りましょうか。こんな物騒な所、長居は無用ですし・・。
・・上手く、テレポートが使えればいいんですけど」
ターベル「さすがに、歩いて帰るってのもキツいしなぁ・・
使えてくれると助かるけど」
プレア「なんとか、魔力は足りるかと・・」
そう言って、手を叩こうとして・・訝しげに、もう一度棺を振り返った。
プレア「・・今、なにか音がしませんでした?」
テレック「・・音?」
・・かたん。
棺のふたが、震えている。
・・まさか、と、慌てて立ち上がった。
クリース「・・まさか、まだ完全に封印されてな・・!?」
刹那、棺から黒い閃光が走り、かすれた声が絞り出される。
『貴様らも・・道連れじゃ・・!!
永遠の闇を、彷徨うがいい・・・・!!!』
クリスケ「・・・っ!?」
勇者たち全員に向かって、闇の矢が、放たれる。
避けようが無い。
・・・・!!!
目を瞑った、その時。
バシィインッ!!!
『・・・なんじゃと!?』
目の前の存在を見つめて、口が開く。
・・これは。
『・・あーあー、なんでこんな身代わりに召喚されないといけないんだよ・・
別に、どうせ消えてた存在だからいいんだけどさぁ、
もうちょっと礼儀ってものを知っててほしいな、オイラとしてはさぁ・・』
クリスケ「なっ、なっ、なんっ・・・!?」
『あれ、驚いてる。
なんだ、身代わりに召喚したの君じゃないの?
ま、抹殺されてたこっちとしては、召喚されたおかげで助かったけど』
クリスケ「最終試練の・・あの時の・・!?」
『そう、正解。
なんか知らないけどこっちの世界に戻れてラッキー・・
・・呪いかけられたみたいだけどさー』
そう、彼らは。
最終試練で打ち消した、自分の中の「悪」。
・・どうやら、他の仲間たちも全員唖然としているようだ。
『どうでもいいけどさ、あいつ、ほっといていいの?』
クリスケ「・・・!」
振り返ると、カゲの女王が封印の魔法から逃れようと、
ふたを持ち上げ、空へ駆け上がろうとしている。
クリスケ「させないっ!!・・みんな!」
最後に、もう一度。
スターストーンを掲げて。
プレア「この七つのスターストーンの力によりて、
星の光よ、悪しきものをこの場所に留めおけ・・!
願わくば、永遠に近いほどの時を・・!」
ばんっ、と棺のふたが閉じる。
プレアが、スターストーンを放った。
プレア「七つの石、封印の鍵となれ!
悪しきものを封じ込める、星の鎖となるように・・!!」
七つのスターストーンが、紋章を描き、棺をかこむ。
そして。
「「「マジック・オブ・スィール!!!」」」
今後こそ、永遠にほど近く。
断末魔の叫びと共に、カゲの女王は、封印された———・・。
—————————————————————
テレック「・・にしても、・・お前たち、どうしてここに・・?」
『・・あの後、オレ達は消えた・・はずだったんだが。
誰だか知らないが、強力な魔法で、呼び戻されたんだ。
ちょうど、ここに・・な』
封印が、終わったあと。
やっと息をついて、テレックは「自分」を振り向き、問いかけた。
どうやら、一同がこの事を知りたがっていたようで、注目が集まる。
キノール「誰か、って・・?」
『・・な、みん・・な・・』
キノール「・・何か言った?」
とたん、スターペンダントが光を放った。
『みんなぁ・・っ!!無事だったんだねっ・・!?』
ホープ「スターライト!」
『よっ、良かったぁあ・・。
女王が呪いをかけたとき、どうなるかと思ったよっ・・!
テレサルが未来夢を見てなかったら、どうなってたか・・!』
テレック「ちょっ、今、テレサル・・って言ったか!?」
『うんっ!
テレサルがね、夢の世界で見かけた未来夢で、
ちょうどあんな場面があったのを思い出して、それで、地上に向かって、召喚呪文を・・』
クリース「それでか・・!」
『・・え?なに、テレサル?
あ、なんかね、そこの・・召喚された人たちに、
テレサルが言いたいことがあるんだって』
一瞬の、間をおいて。
『・・聞こえるか?』
『ああ、お前がオレ達を召喚した張本人か!
・・で、こっちとしては理由もいわれずに呼び出されて、
ちょっと文句のひとつも言いた』
ターベル「・・おい、オレ、少しは黙ってろ」
『へいへい・・』
不機嫌そうに放たれた「正」の自分の声に、
彼はしぶしぶ引き下がる。
『あの呪いは、スターストーンを持っている限りは無力化される。
でも、スターストーンを手放したら、遅かれ早かれ、呪いが降りかかる。
黒い箱が現れて、魂を封じ込めてしまうそうだ』
キノール「・・えっ、ちょっと、それって・・。
・・なんか、この「僕」に対して、少しひどすぎるような・・」
『そうそう、言っとくけど僕らは封印なんてされたくな』
その声を遮り、冷たい皮肉な声がペンダントから響いた。
『・・召喚呪文、解いてもいいけど?』
『・・・げっ、また消えろって言うわけ!?』
『オレたちは、召喚呪文を解かれたらまた無になってしまうんだぞ?』
『召喚主として命じる。
そのスターストーンは、悪用される事がないように、
どっかに散らせて隠しておけ』
それでいいだろう?と確認の声が入る。
プレア「・・確かに、私が持っていても構いませんが・・。
また今回のようになると」
クリース「それなら・・。
・・でも、テレサル、この・・」
口ごもり、視線で隣にいるもう一人をさす。
『ああ、ちゃんとやるかどうか、って?
オレがここで見張ってるし、なんか変なことしたら
即効で召喚呪文といてやる』
ここまで言って、口調が変わった。
『・・好きでお前らにこんな事を押し付けたわけじゃない。
それと・・時の彼方で呪いが解かれたときには、
自由にどこへでも行っていいから』
『本当か!?それならやる!』
『任せとけ、バッチリ隠してきてやるぜっ!』
『約束だからねっ!』
その言葉を、最後に。
自分たちにそっくりな正反対の存在は、
あっという間に駆け去っていった。
—————————————————————
ターベル「・・それじゃ、オレ達も帰るか!」
テレック「・・ああ、そうだな!」
自分たちの、居場所へ。
プレア「・・あの、さっきの最後の魔法で魔力を使い果たしてしまって・・。
歩いて帰ることになりますけど、いいですか?」
クリース「のんびり、平和を楽しみながら帰ればいいさ」
クリスケ「そうだね・・!」
笑いながら振り返って、後ろを振り返り、瞬きをする。
その、視線の先で。
カーレッジの木霊が、うっすらと消えていっていた。
笑ったまま、小指を差し出して。
クリスケ「・・・行っちゃうの・・?」
・・また、会おう・・
やっぱり、その言葉を最後に。
藍色のきらめきを残して。
きらめきの向こうで、夜空が、今までで一番、輝いて見えた・・。
ラスト・エピソードへ・・