ステージ8−1 星々の国では・・。
ウィッシュ「スターライト・・どう、進んだ?」
スターライト「だめ、この辞書も合わないよぅ・・」
ウィッシュ「・・はああ」
あれからしばらく。
あたし達は、えんえんと図書館にこもって
古代語の辞書とその紙を照らし合わせてたんだけど・・。
あうぅ、目が痛い・・
ウィッシュ「くっ・・。さすが、姉さん達が読めなかっただけの事はあるわね・・」
スターライト「そんな事言ってる場合じゃないでしょ?
だめだ、この辞書でもぜんぜん意味が通らないや・・」
ぱたん、とスターライトが辞書を閉じる。
スターライト「そもそも、これもウィッシュがボクに手伝ってって言・・」
ウィッシュ「なにか言った?」
スターライト「言ってないです・・・」
はああ・・。
ため息をついて、もう一度紙に目を落とす。
そもそも・・この紙、単語なんか一個も書いてやしない。
適当に文字を並べただけのようにも見えるんだよね・・
でも、あの本の続きとは思うんだけどな・・
ウィッシュ「・・あれ?」
文字に沿って滑らせていた指を、ふと止める。
ここの文字の連なり・・どこかで目にしたような。
もしかしたら・・。
スターライト「なにか見つけたの?」
ウィッシュ「ねえ、スターライト!ここの言葉・・ちょっと、星々の国の古代語辞書、持ってきて!」
スターライト「ええ?だって、一番最初に照らし合わせたときは、
ぜんぜん意味があわな・・」
ウィッシュ「いいからっ!」
スターライト「はいはい・・」
スターライトが持ってきた辞書を、
あたしはすごいスピードでめくりだしたの。
ここ数時間で、古代語にも慣れたしね・・;
ぶつぶつ呟きながら探して探して・・
・・あった!!
ウィッシュ「見つけた・・っ!スターライト、手伝って!!」
スターライト「またなにかの偶ぜ・・」
ウィッシュ「ほらっ、ここ・・!」
あたしは一点に指を置き、辞書を見ながら読み上げる。
えーと・・
「『星の魂を胸に宿らせし者よ、勇者たちに光を与え、その道を照らせ・・
その時紡ぐべき言の葉は・・—なになに、
— 願う心の奇跡よ、星となり・・」
スターライト「ちょ、ストップ、ウィッシュ!それってもしかしたら、古の呪も・・」
ウィッシュ「・・光を放て —』えっ、なにか言った、スターライ・・」
・・カッ!!
その紙切れの文字が激しく光を放ったのは、
そのときだったんだ。
ウィッシュ「きゃああっ!?」
・・って、待て待て待て!
光どころじゃないよ、これは!
なんか、風まで起きてるんですけどっ!?
バタンッ!!
ホープ「・・スターライト、ウィッシュ!?これは・・どうなってんのっ!?」
プレア「ウィッシュ、その紙は・・!」
ウィッシュ「・・ホープ姉さん!プレア姉さんもっ!」
シュウウゥゥ・・。
スターライト「光が・・」
光はだんだん小さくなっていって、
最後にはしずくみたいになって紙に落ちたの。
や・・やっと止まった・・
ホープ「ウィッシュ、あんた、またなーんかやらかし・・」
ウィッシュ「ちち、違うよお!これ!この紙!」
慌ててあたしは、その紙を姉さんにつきだす。
ウィッシュ「それ・・こないだ読めなかった紙、真ん中のほうにだけ見覚えのある文字の列があって・・
それで、その部分だけ読めて・・そこ読んだら、急に」
ホープ「どれど・・」
姉さん達は紙を覗き込んで、とたんに息をのんだ。
疑問に思ってあたしも覗き込むと・・
さっき、光のしずくが落ちたところから
光の波紋が広がって、文字が正しい並びに変わっていく!?
なな、なんで!?
プレア「さっきのは・・この紙の配列を直す呪文ね!」
ホープ「・・そのわりには大掛かりだったなあ?まあいいわ、待って・・。なになに、
『星の魂を持つものよ、ここから先に記すのは、私の残す予言である——・・・
いつかの未来に、役に立つように・・。
・・もし、』な、なあんですってえええ!?」
ああ、叫んでるヒマがあったら読み上げて・・
よかった、あたしのした事、
すこしはいい方向に動いたみたいね。
予言・・伝説。どんな事が書いてあるんだろう・・?
ステージ8−2 カゲの女王
ギイイ・・
音をたてて、女王の間の扉が開く。
マジョリン「女王様・・あのぅ・・、ご報告に・・」
カゲの女王「・・言葉に詰まっているということは、また魔物部隊が敗北したということじゃな?」
後ろを向いたまま、女王が静かに、それでもどこか恐ろしく、問いかけた。
マジョリン「ぅ・・あ・・はい」
カゲの女王「——もうよい。そやつらは、ここに来る気なら必ず白い塔の周辺を通る。
奇襲をかけ、今度こそ息の根を止めるのじゃ」
マジョリン「ははっ・・」
カゲの女王「わらわは・・もういい、面倒じゃ、スターストーンを持って来い。
もしお前たちが負けた場合は、わらわが直々にスターストーンの力を使う。ところで・・
ゴンババに持たせたスターストーンはどうなった?あれ以来、報告が入っていないのじゃが?」
マジョリン「え・・ええと」
カゲの女王「スターストーンを持たせたのじゃから、当然、近くの村々は滅ぼしているのじゃろうな?」
マジョリン「・・そ、それが・・その近くの村に結界がはっておりまして・・」
カゲの女王「スターストーンの力なら、結界などなんの意味も持たぬはず。正直に述べよ、マジョリン」
マジョリン「・・・」
とうとう脂汗を浮かべて黙ってしまったマジョリンを見て、
女王が苛々とした声で続ける。
カゲの女王「・・もうよいわ。あの後世界中に散らせたスターストーンを直ちに持って来い。
場所は分かっておるな?それから、マリリンと残りの魔物部隊を、白い塔の周辺に配置しておくのじゃ。 スターストーンを回収し終わったらお前も配置に。大至急。行って来い」
マジョリン「は、ははっ!」
そう答えて、カゲの力でテレポートしようとして・・
ふとマジョリンは動きを止めて、
いまだに振りかえらない女王に問いかけた。
マジョリン「あ、あの・・女王様?」
カゲの女王「なんじゃ!」
苛々とした表情でようやく女王が振り返る。
マジョリン「ただの国民六人に、わざわざスターストーンの力を使わずともよいかと思・・」
カゲの女王「愚か者!わらわの魔物部隊をのうのうとすり抜けてきた輩がただの国民のはずは無い。
・・それに、あのローズマリー女王まで覚醒しおって、いつわらわの力が弱まっても不思議は無い。
おまけに・・あのローズマリー女王を見つけた魔術で・・
もう一つ厄介なことを見つけてしもうたわ!」
マジョリン「・・厄介なこと・・?」
カゲの女王「お前はさっさとスターストーンを回収して来いっ!」
マジョリン「は・・ははっ!!」
シュワン・・
マジョリンがカゲの力でテレポートした後、
カゲの女王は誰に言うのでもなしに独り言を吐く。
カゲの女王「死を乗り越えてわらわを追いかけてくるなど・・
愚かな、しょせんはまた敗れるというのにな・・!」
皮肉な女王の笑い声は、高らかに響く。
先刻、あのローズマリー女王を見つけた魔術で、カゲの女王は見つけていた。
この城に潜入し、自分を追うもの。
かつて、ローズマリー女王を乗っ取ったときに愚かにも自分に戦いを挑んできたあの六人が、
死を乗り越え、生まれ変わり、前世の記憶を取り戻し自分を追っていることを・・
カゲの女王「愚か者どもめ・・今一度戦いを挑んできたところで、
もう一度その身体を滅ぼしてやるだけじゃ・・!」
最後の戦いの歯車は、今回り始めた——・・・
ステージ8−3 待ち伏せるカゲ
たたたた・・
国王「見えた・・白い塔だっ!」
キノール「ねっ、ねえ、この後はどうするのっ!?
ローズマリー様、まだ目が覚める気配がないけどっ・・」
クリース「テレサルはまだ夢の世界に・・?仕方ない、とにかく今は・・」
こくり、とテレックがうなずく。
テレック「分かってる・・そのまま直進!そしたら・・そこに見えてる橋を渡ってくれっ!
その先になら、すこしは隠れられるところもあるから!」
ターベル「了解っ!」
その時ふと、クリスケが立ち止まった。
クリスケ「・・!?何か来る・・!!」
キノール「えっ?」
クリスケ「みんな、戻っ・・!!」
その言葉を言い終わらないうちに、
足元にカゲが広がり・・。
凄まじいばかりの電流が辺りを切り裂いた!
・・バシイイィンッ!!!!
クリスケ「うわあああっ!!!」
国王「なっ・・!なにがどうなって・・!?」
「おやおや・・。そこのアンタは敵を察知するチカラがあると聞いたけど、さすがに
テレポートしてくる相手を事前に察知するほどまでは能力は高くないみたいだねぇ?」
「んあ〜」
シュワン・・
足元に広がったカゲから、人影・・いや、カゲが現れる。
国王「お前は・・っ!」
マジョリン「お久しぶりさね、元国王。あの日、女王様がアンタの体を滅ぼした日以来さね?」
クリスケ「カーレッジ・・こいつ・・」
マジョリン「・・自己紹介がまだだったね。そうさ、アタシがマジョリン。女王様の右腕。
今の雷は、妹のマリリンが放ったものさ。
七つのスターストーンのチカラを借りてね・・。
ずいぶんと利いたんじゃないかい?」
ターベル「悪いけど、無駄話してる時間は・・」
手をついて、立ち上がる。
ターベル「ないん・・だあっ!!」
・・・が。
・・ビリッ!!
ターベル「・・ッつ!?」
目を見開く。
蹴りを放とうとした体が、くずおれた。
クリスケ「どうし・・あ痛っ!?」
立ち上がったクリスケもまた、倒れる。
マジョリン「スターストーンの雷のチカラをあなどるんじゃないよ?どうやら、後から遅れて痺れ・・
マヒがきたみたいだねえ。さあてと、邪魔者の動きは封じた・・。これで後は・・」
マジョリンは、振り返る。
痺れで膝をつき、それでもローズマリーを抱えているキノールを。
マジョリン「そこのキノコ頭の抱いている、ローズマリー女王陛下を消し去るのみさね」
キノール「そんな事・・させ・・るもんかっ・・!」
マジョリン「痺れて動けない体でよく言うねぇ。アタシを止められるのなら止めてみ・・」
キイィーンッ!!
・・ビシイィッ!
マジョリン「・・・なっ!?」
クリスケ「お前の、相手は・・オイラだっ!!
ローズマリー・・様にっ、なにかしたら、許さないっ!!」
マジョリン「ああ・・そういえば、女王様がアンタには超能力があるって言ってたか。
忘れてたさね。
マリリン、やってやりな」
マリリン「んあ〜」
ばっ、とマリリンが手を上げる。
マジョリン「アンタだけなんて言わないさ、アンタらの仲間全員に雷を見舞ってやるさね!!
そいつらはそこから動けない、つまり、アンタと一緒に雷を受けるしかないわけさ!
スターストーンのチカラを受ける覚悟はいいね!?」
クリスケ「・・みんな、逃げてっ!!!」
キイィーンッ!!
キノール「・・うわっ!」
超能力で、クリスケが仲間を雷の射程圏外へ飛ばす。
国王「フィールッ・・!またあいつ・・くそっ!!」
マジョリン「今さね、マリリンっ!!」
ビシイッ・・
雷が放たれた、その瞬間。
「・・させないわっ!!!」
・・パアンッ!!
突然、声と共にどこかから飛んできたソレは、
放たれた雷をあっというまに弾き返した!
マジョリン「なにっ!?」
クリスケ「え・・え・・・?今の、タ、タロット・・カード・・?」
マジョリン「誰さねっ!?」
弧を描いてブーメランのように戻るタロットカードを満月を背にしたその人物は受け止めて、構える。
「みんな、お待たせ!!やっと来られた・・。
さて、あたし達が来たからには・・あんたみたいなヒキョー者、叩きのめしてあげるっ!
そこのヒキョーなカゲのお婆さん!?
あたしの友達を傷つけた罰、たーっぷり受けてもらうわよっ!!」
ぱちん、と勇者達にウィンクをしてタロットカードを片手に構えた、
満月に照らされたその姿は・・。
一同「ウィッシュ——————ッ!!??」
ステージ8−4 星々の魂
クリスケ「ななっ・・なんで・・、ここにっ!?」
ウィッシュ「・・詳しい話は後で!行けえっ!」
・・シュッ!
掛け声と共に、先ほどのタロットカードが宙を飛ぶ。
マジョリン「・・おっと!ははぁん、あんたが噂に聞く星々の魂ってわけかい!
邪魔はさせないよ!吹雪攻撃!!」
ビュゴオオォッ!!
クリスケ「危な・・」
パンッ!
タロットカードから紋章が浮かび上がり、吹雪を弾き飛ばす。
クリスケ「・・・!?」
ウィッシュ「このタロットカードは、ただのカードじゃないんだから!
まあ、さっきの雷を弾いた時点で分かって欲しかったけど。これは、スタータロット!
古より伝わった、邪悪なチカラを寄せ付けない、星の光の宿ったタロットカードよ!
あんた達なんかこれで・・」
マジョリン「なるほどさね・・。間接的な攻撃じゃだめって事かい?それなら・・」
シュワン・・
言葉と共に、マジョリンの姿が消える。
ウィッシュ「えっ?」
マジョリン「直接攻撃ならどうなんだい!?」
シュワンッ!
突然ウィッシュの目の前に現れたマジョリンの手には、
氷から作られた槍が握られている!
マジョリン「タロットを繰り出せなけりゃ、あんたなんかただのザコさね!・・くらいな!」
ガキィンッ!!
マジョリン「・・なっ!?」
「・・あら、星々の魂が一人だけだなんて思わないで下さいね?」
そこにいたのは、杖を横にして両手で支え、
振り下ろされた槍を受け止めたまま笑っている、星々の魂の一人・・。
クリスケ「プッ・・プレアまでっ!?」
マジョリン「・・しまった!確か、星々の魂は全員で三に・・ん?という事は・・」
「その通り!私の事も忘れられちゃ困るわね!!」
・・パァンッ!!
金色のフラフープのようなリングが、
マジョリンを後ろへ弾く。
クリスケ「ホープ!?」
ウィッシュ「あたしが初めに、『あたし 達 が来たからには・・』って言ったのを覚えてなかったの?」
ホープ「さあ、おとなしく星の裁きを受けなさい!」
マジョリン「・・ふんっ!まあいいさ、アタシは知ってるよ!星々の魂は悪を弾くことはできても、
消し去ることはできないってねえ!
いかなるものも傷つけることができないのがアンタらだろう?」
ホープ「ええ、確かに、その通り。
だけど、私たちには頼れる勇者たちがいるわ。
あんた達へのトドメは、彼らがしてくれるでしょうよ」
マジョリン「・・その頼れる勇者さんたちはマヒしているのを忘れてるんじゃないだろうね?」
ホープ「あら?私の妹の別の名を
知らないのかしら?プレア!お願い!」
プレア「勇者たちには言いましたけれど・・
私の別の名は、「祈る者」。祈りのチカラが使えます。
このチカラを使えば、彼らを癒すこともできます。・・今、勇気ある者たちに、祝福を与えよ!」
ポウ・・
金色の光が勇者たちを包み、消えた。
プレア「これで・・」
クリスケ「えっ・・あの・・さ、変わらない・・よ?」
プレア「ええっ!?」
マジョリン「ヒーッヒッヒィ!そこのプレアとかいう小娘!いいかい、
そこの勇者たちにかけた痺れ魔法は、スターストーンのチカラを使った物!
アンタから作り出したスターストーンがかけたものさね!
つまり、アンタはスターストーンと同じくらいのチカラしかないからその勇者たちにかけた
痺れ魔法は癒すことができないよ!」
プレア「そんな・・!」
クリスケ「それなら、オイラの超能力でっ・・」
ウィッシュ「だめっ!フィール、あなたねぇ、この後最終バトルが控えてるっていうのに、
超能力の乱用はやめてよね!」
クリスケ「ら、乱用って・・;」
ウィッシュ「ここはあたし達がなんとかするから!」
マジョリン「ふん!できるもんならしてみるさね!」
ステージ8−5 敵意を持たない男のコ
マジョリン「こっちは遠慮なくやらせてもらうよ!マリリン!やっちまいな!」
マリリン「んあ〜!!」
マジョリン「アタシからもさね!吹雪攻撃っ!」
・・パンッ!
放たれた雷と氷を、プレアとホープがはじき返す。
クリスケ「このままじゃ・・。どう・・すれば・・」
ウィッシュ「とにかく今は、あたし達には時間稼ぎしかできない・・。ねえ、その痺れ、まだ取れない?」
クリスケ「ん・・」
ウィッシュ「時間に任せるしか・・。たぶん、時間が経てば痺れも取れるだろうし・・」
クリスケ「ねえ・・」
ウィッシュ「なに?」
クリスケ「プレアが・・祈る者、なんだよね?じゃあ、ウィッシュとホープにも、なにか力とか・・」
ウィッシュ「ダメなの」
ウィッシュが、呟く。
ウィッシュ「ダメなのよ。確かにあたしとホープ姉さんも、力は持っているの。
あたしは願う者、ホープ姉さんは希望の者。
でも・・あたし達の中では、プレア姉さんが一番チカラを持ってる。
祈りのチカラは、自分ではなく人のためにする物だから。
そのプレア姉さんでもダメだったのなら、あたし達は到底むり。
そもそも、人を癒せるのはプレア姉さんだけよ」
クリスケ「じゃあ、やっぱりオイラが・・」
マジョリン「・・なにゴチャゴチャ言ってるんだい!?
ったく、これじゃいつまでたっても勝負がつきやしない!マリリン!
ちょいとばかしそいつらの相手をしてな!」
・・シュワン!
そう言い残し、マジョリンの姿が消える。
プレア「・・えっ!?」
マリリン「んあ〜!!」
バシイイィンッ!!
ホープ「・・うわっ!」
ウィッシュ「な、なにっ!?あのお婆さんは!?」
マジョリン「あたしなら、ここさね!」
シュワン!
「ちょ、ちょっと、お姉さま!?いきなりなんなの!?
ねえ、なんでいきなりアタイに目くらましと耳くらましの呪文かけたの!?」
マジョリン「ええい、お黙り!
ここでアンタの目と耳をふさいでなかったら、怖がってなんもしないだろ!
いいから黙って炎を出せる限り呼びだしな!」
ビビアン「そ、そんなイキナリ・・だってお姉さま、なんでまた急にそん・・」
マジョリン「さっさとやらないと、オシオキだよ!!」
ビビアン「うっ・・・はい・・。・・・まほうのほのお!!」
・・ボオッ!!
生まれた炎が、真っ直ぐにホープへと飛ぶ。
ホープ「こんな炎・・」
炎を弾こうとして突き出したスターリング。
それに弾かれるはずの炎は・・あっさりと、それを突き抜けた。
ホープ「・・えっ!?」
・・ボシュッ!
ホープ「うわあっ!?」
プレア「ホープ姉さん!」
マジョリン「ヒヒッ、思ったとおりさね!アンタらが弾けるのは、悪そのものだけなんだろう?
つまり、敵意・・悪意がなければ攻撃は通じるって事さね!」
ビビアン「お・・お姉さま?攻撃が通じる、って・・。
アタイ、今誰かにまほうのほのお当てちゃったの?
耳くらましの呪文だけでも解いt・・」
マジョリン「いいから黙って炎を呼び出すんだよ!やらないとオシオキだよ!」
ビビアン「ええっ、そ、そんな・・。・・まほうのほのお!」
ボッ・・
炎が生まれようとした瞬間、
キィーンッ!!
ビシィッ!
ビビアン「・・きゃあっ!?」
プレア「・・フィール!?」
クリスケ「ごめん、なんか今は・・乱用だのなんだの、言ってる場・・合じゃ、な・・」
ホープ「・・しまった!!やばいっ!」
突然の鋭い声に、クリスケが慌ててホープの視線をたどる。
(顔が動かせないので、視線を動かして・・だが)そして、見つけた。
今のどさくさに紛れて、倒れている仲間たちの所へテレポートし、
氷の刃を振りかざしているマジョリンの姿を。
ウィッシュとホープが慌ててカードとリングを飛ばすが、間に合う距離ではない。
さっき仲間たちを自分の力が届くギリギリの距離まで飛ばしたのが災いし、
あそこまでは超能力も届かない。
——どうしよう・・!
頭の中が真っ白になった瞬間・・そう、その瞬間、
どこかからかすかに一つの呪文が響いた。
ステージ8−6
マジョリンが振り下ろす氷の刃が・・
ピタリと、止まった。
・・いや、マジョリン自身の動きが完全に止まっている!?
プレア「・・えっ!?」
ホープ「なに・・これ!?」
マリリン、ビビアン、水の流れ、空気の流れ、全ての動きが止まっている。
ウィッシュとホープが投げたカードとリングまで、空中で静止していた。
クリスケ「これ・・って・・」
ウィッシュ「・・もしかして!!さっきの呪文、よく聞こえなかったけど、時の魔法だったんじゃない!?」
クリスケ「うん・・、時の魔法だ!感じる!」
ウィッシュ「テレックがやったのかな?」
クリスケ「だと思う、・・この気配は・・あれ?」
ウィッシュ「どうしたの?」
クリスケ「ううん、たぶん・・気のせい。テレック、だと、思うよ」
その時、クリスケの胸元のスターペンダントが光を放った。
『・・ープ、ホープ!!』
ホープ「その声・・スターライト!?」
ウィッシュ「大変なの、プレア姉さんの癒しの力が効かないのよ!」
スターライト『状況は分かってる!この本で、魔法の水鏡を直す呪文を見つけて・・
って、違う違う、そうじゃなくてっ!』
プレア「今の私たちには、防御しかできないの・・!それに、あの赤い帽子のコが・・っ!」
スターライト『落ち着いて!大丈夫だから!よく聞いて、ここに一つの呪文が載ってるんだ!
『いざという時の、最後の自衛手段の魔法』って書いてあるよ!なんでも、
星々の魂にしか分からないように、暗号で書いてあるんだけど・・。
プレア達になら、たぶん正しい呪文と意味が分かるはずだよ!
いい、読み上げるよ、よく聞いて!!
「汝、星々の魂ならば、この言葉の意味する、
正しい呪文が伝わるであろう!胸の奥に眠る記憶を呼び覚まし、唱えるがいい!
‘nosrep elarom dab slaes taht pirtnac,laes fo cigam’」
これが呪文だよ!』
クリスケ「・・・は?」
目が点になっているクリスケの横で、
三姉妹が真剣な表情でしっかりと頷く。
ウィッシュ「分かったわ、大丈夫!」
その時、空気がかすかに動き始めた。
スターライト『時間が・・動き出すよ!』
マジョリンの腕が、
時間とともに再び振り下ろされ始めるのと同時に、三姉妹は唱えた。
『悪しき者を封ずる呪文、
マジック オブ スィール!!』
三姉妹の声と同時に、足元に星の光で魔方陣が描かれる——・・・。
———————————————————————
星の光が風と共に宙を舞って・・・。
鐘の音のような澄んだ音が、高く高く響いた——・・・。
ステージ8−7
カラン・・・・。
クリスケ「・・・・ええ・・!?」
音を立てて、
マジョリンとマリリンのいた場所に水晶が落ちる。
ウィッシュ「やっ・・た・・!!」
ふらっ・・。
クリスケ「うわ、ちょっと、危ない!」
キィーン!
とっさに超能力で、よろめいた三人を受け止める。
クリスケ「どっ・・どうなってるの!?」
ウィッシュ「ふえ・・ちょっと待って、息ぐらいつかせてよ・・
・・ふうっ・・。疲れた・・。・・すごい強力な呪文だった・・」
クリスケ「今のは・・?」
ホープ「・・封印の呪文よ・・。私たち、星々の魂が使える最高クラスの呪文ね。
古文書でその存在を知ってはいたけれど・・唱える日が来るなんてね。っはあ、かなり消耗したわよ、これ」クリスケ「呪文が意味不明だったんですけど・・;」
くすくす、とウィッシュが笑う。
ウィッシュ「あたし達星々の魂にだってね、少しは不思議な力があるわよ。説明は出来ないけどね。
あたし達だって、どうしてあの呪文の正しい詠み方が分かったのか分からない。
でも、フィール達だって説明の出来ない不思議なことは、嫌ってほど体験してるでしょ」
クリスケ「まあね・・;カーレッジの実体化といい、試練の森みたいな異世界といい、
あげくのはてには超能力があったね」
プレア「ところで」
そう言いながら、肩で息をしていたプレアがようやく顔をあげる。
そして、驚いて目を見開いた。
クリスケ「どうかした?」
プレア「痺れは・・どうしたんです!?」
クリスケ「へっ!?」
ウィッシュ「あーーっ!そういえば!普通にしゃべってる!というか、フィール、普通に立ってるーー!?」
クリスケ「す、すっかり痺れのこと忘れてた・・;
え・・でも、どうしてだろう?オイラなんにも・・」
ホープ「・・ねえ、フィール?」
クリスケ「うん?」
ホープ「あなたの後ろに、もんのすっごく何か言いたそうな人たちが立ってるわよ」
クリスケ「・・えっ?」
何気なく振り向いた・・その瞬間!!
「「こんの大バカアアァアァッ!!!!!!!」」
クリスケ「☆×※○△!!?」
国王「フィール、お前はなあぁっ!
どうしていつもいつも私たちの事ばかり考えて、自分をないがしろにしているんだっ!!?」
クリスケ「カカ・・カーレッジ???」
ターベル「あの後・・ウィッシュが現れなかったら、お前今ごろ、相当な怪我負ってるぜ!?
しかも! フ ィ ー ル だ け が ! !
フィールに飛ばされた後、オレたちがどんなにヒヤヒヤしてたか!
もう、あの時は自分を呪ったぞ、本当に!
呪文を唱えたって、切れ切れにしか唱えられないせいで効果が薄れて、
フィールたちのところまで届きやしないし!!」
クリスケ「シェ、シェンス、落ち着いて・・;それに、あの時はあれしか方法が・・。
ほら、雷攻撃一回くらいなら、致命傷にはならなかっただろうし」
キノール「・・あのマリリンとか言うやつが雷の呪文を唱えるのと同時に、
マジョリンも氷の刃の呪文を唱え始めたのが聞こえなかったの?」
クリスケ「え゛・・・」
テレック「・・雷攻撃でオレたちをさらに弱らせてから、あの氷の刃でトドメをさすつもりだったんだろうな」
クリスケ「・・・・;」
国王「あと、私たちを守る事に無我夢中になりすぎて、バリアの存在、忘れてただろ・・」
クリスケ「・・・・・えー・・っと・・(滝汗」
はあ、と国王がため息をつく。
国王「・・どんなに心配したか。
今なら覚えてるだろ、前の世界でお前が夢の世界に入ったときや、
他にもピンチになった時に、私がヒステリー起こしてたことくらい」
クリスケ「・・ごめん;」
国王「ちっ、違う違う、謝れって言ってるわけじゃないんだ。そりゃ、確かにものすごく心配したが・・
私たちを守ろうとしてくれたんだからさ」
最後に、ボソッと「・・ありがとう」と付け加えたのを、フィールは聞き逃さなかった。
クリスケ「ううん、オイラもお礼を言わなくちゃ。ありがとう。心配してくれて。・・でさ、みんな?
聞きそびれたけど・・。
・・痺れ、どうしたの?」
その問いに、クリースがくすくすと笑って、横にずれる。
そこにいたのは・・。
クリスケ「ローズマリー様あっ!!!?」
ステージ8−8
リーム「フィール、心配かけてごめんなさい。
ちょうど、プレア達が封印の呪文を発動させた一瞬前に、目を覚ますことが出来たんです」
クリスケ「じゃあ、夢の魔法で痺れを・・?」
リーム「ちょうど、空気中に残っていたプレアの癒しの魔法の力も、助けてくれましたから」
クリスケ「そうだったんだ・・。あ、そうだ!
もう一つ忘れてた、ねえ、あの時、時の魔法を使って助けてくれたの、フォースだよね?」
テレック「・・えっ?フィール達じゃなかったのか?」
クリスケ「ええ!?」
そんな中、ローズマリーの声が響く。
リーム「・・彼、のしわざだと思いますが」
クリスケ「へっ?彼?」
リーム「フォース?私が夢の世界から目覚めることが出来たのは、どうしてですか?」
テレック「え?そりゃ、テレサルが目覚めt・・」
最後まで言わないうちに、
何かに思い当たり目を見開く。
テレック「・・まさかっ!!?」
リーム「そう、そのまさか、です。——ほら」
スッ、と女王が上を指差す。
見上げると、もう見慣れた、あわてて飛び去っていく白い影が見えた。
テレック「じゃあ・・。テレサルが、オレ達を助けた・・!?
・・信じられない・・」
クリスケ「テレサルがオイラ達を助ける、なんて・・。
テレサル・・夢の世界で、何かを見つけたんでしょうか?」
リーム「忘れた物を取り戻さなければ、夢の世界からは出てこられません。
・・きっと、何か大切な物を取り戻したんでしょうね」
テレック「・・あいつの忘れた物って、何だったんだろうなぁ・・。
・・女王様。この戦いが終ったら・・オレ、テレサルと仲直り・・。・・できるかな」
リーム「大丈夫ですよ、きっと。
ところで・・。そこの影に隠れているあなた?出ていらっしゃい」
すい、と女王が手を上げる。
クリスケ「えっ?」
シュワン・・
一同「あーーーっ!?」
「きゃああっ!?」
ウィッシュ「あ、あ、あなた、さっきの!!
なな、なんでここにいるのっ!?封印されてないの!?」
ビビアン「えっ!?えっ!?あ、あなた達、だれっ!?お姉さまは!?
えっ、目くらましと耳くらましの呪文が消えてる!?
どど、どうなってるの!?」
クリスケ「え・・えっと・・;呪文が消えたのは、たぶん、このせいだと思うよ」
クリスケが視線で、水晶を指す。
ビビアン「・・この水晶がどうかしたの?」
クリスケ「いや・・それが君のお姉さん達」
ビビアン「・・えっ!?」
目を見開き、信じられないというように、勇者たちを振り返る。
ビビアン「・・お願い、話して。アタイが呪文をかけられてた間、なにがあったのかを」
国王「実は・・」
---------------------------------------------------------------------------
ビビアン「そんな事が・・。ごめんなさい。
知らなかったとはいえ、ひどいことしちゃって・・。」
ウィッシュ「うん・・あの、えーと、ビビアン・・だよね?
あなたは・・あたし達を襲わないの?」
ビビアン「え?なんで?」
ウィッシュ「あなたのお姉さん達がああだったから;
それに、あなたも一応女王の家来だし。
あと、実のお姉さんも封印されて、反撃してくるかなーって、ちょっと不安だったんだけど」
ビビアン「うーん・・どっちかっていうと、アタイが
使えてたのは女王様っていうかマジョリンお姉さまだったし。
・・実は、アタイ女王様に会ったこと1〜2回しかないんだ;
それにその・・お姉さまたちが封印されたのは、あなた達を攻撃したからなんでしょ?
・・そりゃ、確かに、いつもイジワルなお姉さまでも、
封印されちゃったのは寂しいけど。
ねえ・・プレアさん。お姉さまたちの封印、どれくらいで解ける?
十年ぐらい?それくらいだったら」
プレア「・・その、言いにくいですけれど・・
・・多分、九百年から千年の間くらいだと思います。
あの魔法は、とっても強力な物ですから」
ビビアン「えっ・・そんなに!?
・・カゲ族は長生きだけど、アタイ、お姉さまより年上になっちゃうよ・・
運が悪かったら・・会えないかも」
うつむいたビビアンの前に、女王が進み出る。
リーム「・・ビビアン、お姉さまにもう一度会いたいですか?」
ビビアン「・・うん。
イジワルなお姉さまだけど、オシオキも嫌いだけど、大切なお姉さまなの」
リーム「それなら、一つだけ方法があります」
ビビアン「えっ・・!?
お姉さまたちの封印を解いてくれるの!?」
その問いに、女王は首をふる。
リーム「おそらく、プレアたちにも封印は解けないでしょう。
解くことができるのは長い時だけ。方法というのは・・」
そこで言葉を切り、まっすぐにビビアンを見つめた。
リーム「あなたも、封印されるのです。一千年の時を越えて・・」
一同「え゛ーーーっ!?」
ホープ「リ・・リーム、それはいくらなんでもひどすぎない?
お姉さんを封印されたうえ、自分も封印されるなんて」
キノール「マジョリンはともかく、ビビアンは敵・・だけど、ある意味では敵じゃないでしょ?
それなのに、封印なんt」
最後まで言わせずに、ビビアンが口を挟む。
ビビアン「あの、ローズマリーさん。
その封印って・・お姉さまと同じころまで続きます?」
リーム「ええ」
ビビアン「じゃあ・・お願いします。
アタイを、封印してください。一千年後の未来まで」
ターベル「ちょ・・」
ビビアン「いいの!さっきの事情を聞いた後じゃ、アタイ、女王様に心から仕えられる自信ないもの。
自分のしてきたことの意味を、知っちゃったんだから。
・・もともと、アタイの意思で仕えていたわけじゃないんだもん。
生まれたときからお姉さまたちはいて、女王様に仕えてて、アタイも仕えてた、それだけなの。
それに、そうすれば・・封印されればアタイの時間も止まったままでしょ?
お姉さまに、また会うこともできる。アタイを、封印してください!」
リーム「ただ・・一つ、問題があるんです。
あなたはまだ若いから・・封印の魔法に耐え切れず、
記憶の一部分が抜け落ちてしまう可能性が、とても高いんです」
ビビアン「えっ・・!?じゃ、じゃあ、封印から覚めたら、
お姉さまたちが誰なのか分からないこともあるってこと!?」
ウィッシュ「・・心配しないで!
あたし達が、全力で、あなたのお姉さん達に対する記憶は守るから!
カゲの女王やあたし達の記憶まで守るのは無理だけど・・;」
ビビアン「そっか・・じゃ、あなた達のことも忘れちゃうんだ・・。
・・短い間だったけど、会えて嬉しかったよ」
クリース「え・・?」
ビビアン「だってね、外の世界を教えてくれたでしょ?
アタイ、今まで闇の宮殿とゴンババ城と、城下町の一部と、滅びた夢の雫国しか知らなかったの。
アタイは、女王様の世界じゃなくて、その国で生まれたから。
だからね、いいこととか、正義とか、優しさとか愛とかは、お話の中でしか知らなかったの。
・・そんなものは夢みたいなものだって思ってたんだ。
でも、それをあなた達が教えてくれたでしょ。
本当にあるんだって分かって、嬉しかったんだ」
テレック「ビビアン・・分かるよ、それ。
オレも・・魔物部隊の一員だったんだから、さ」
ビビアン「そうなの?同じだね。じゃ・・今のアタイの気持ちも、分かるよね?
みんな、さよなら。
アタイは約一千年後に旅立ちます・・なんてね。
あ、そうだ・・ちょっと待って!
アタイは・・やっぱり、女王様の家来だけど、あなた達の味方にもなる。
・・素敵なことを教えてくれたお礼、だよ。
いいことを教えてあげる。
女王様は、あの建物の一番奥にいるよ。
それと・・建物の中で星空を見つけたら、天秤座の所を二回叩いて」
国王「・・建物の中の星空・・?」
ビビアン「覚えておいてね。それじゃ・・封印、お願いします」
クリスケ「あれ・・ねえ、ちょっと待って?
さっき、なぜかビビアン封印されなかったけど・・今度は大丈夫なの?」
ホープ「自分の意志で決めたことは、たとえ神でも、変えることができないものよ。
たぶんさっきビビアンが無事だったのは・・
悪の存在じゃなかったから、としか考えられないわね。
ビビアン、あなたのお姉さんの記憶はバッチリ守るわ、安心してね」
ウィッシュ「あたしも、ちょっと、寂しいなぁ・・。もしかしたら、
女の子同士いい友達になれたかもしれないのに」
ビビアン「あ・・ごめんね。アタイ、男の子なの」
ウィッシュ「はっ!!?」
ビビアン「えへへ、深く考えないでね♪それじゃ、さよなら、みんな!元気でねっ!」
「「せぇーのっ!!」」
鐘の音が、響き渡る。
千年後に旅立つビビアンを、見送るように———・・・。
ステージ8−9
カラン・・
ウィッシュ「・・ビ、ビビアンが男の子・・;」
ホープ「・・えっと、今はそのことはおいておこっか・・;」
そう言いながら、ホープがふと空を見上げる。
そのとたん、顔から血の気が引いた。
ホープ「・・大変っ!!
もうすぐ、満月が天頂にとどく・・つまり・・真夜中になるわ!
あと、一時間くらいしかないわよっ!?」
ウィッシュ「えええっ!?
あたし達が星々の国を出たとき、まだ満月は東の空にあったよ!?
あれから考えたら、まだ満月はせいぜい南東の空くらいのはずなのに!」
キノール「・・え、それがどうかしたの?」
プレア「ああっ、ごめんなさい、言う暇がなくって言いそびれてました!
私たちが地上に来ることができた理由——・・、そのことを!
ああ、とにかく、走って!走って、走って!ビビアンが言っていた、あの建物へ!
走りながら話します、私たちが見つけた予言のことを!
スターライト!スターライト、聞こえる!?」
スターライト『ど、どうしたの!?こっちの空では、
まだ満月は低い位置にあるよ?まだ平k・・」
ホープ「地上と星々の国では、満月の位置が違って見えるってことよ!
あーーっ、もう、最悪だわ!
みんな、聞いて・・じゃなくて、走りながら、聞いて!
私たちは、あの後・・あなた達に鏡で連絡を取った直後—・・
いいえ、正式にはウィッシュが、一枚の紙を見つけたの、ああ、そこらへんは省くわ・・
とにかく、その紙には、私たちの時代についての予言が、記されていたのよ!
それも、不気味なぐらいぴったりとね!
あなた達六人が私たちの国へやってくることも、書いてあったわ」
その言葉に、六人は顔を見合わせる。
ウィッシュ「それで・・その予言の最後の方に、
『勇者たちの前に、最後の敵を前にしてもう一つの試練が——・・』
って、書いてあったわけ。
・・で、信じられる!?またそこで予言が読めなくなってたんだよ!?
・・まあ、とにかく、その予言には、魔法の言葉もいっぱい書かれてたの。
あたし達は、その中の呪文を使って、こっちの世界に来ることができた。
まあ、その呪文は満月の晩にしか利かないんだけど。
っと、違う違う、満月について言ったのはこの事じゃないの!
あの後、その読めない予言の中に、一文だけ、読むことのできる段落があったの。
そこに——・・」
そこで、ウィッシュは俯いて言葉を切った。
プレア「・・私が話します。
その段落には・・今日、ちょうど今日、
光と闇がぶつかり合い、どちらかが滅びるって書いてあったんです。でも、その文の中に・・
満月の光が天頂高く登るときに、
とてつもなく、とてつもなく恐ろしい事が起こる、と・・」
クリース「満月が天頂高く・・」
ターベル「・・とにかく、それまでにどうにかすればいいんだろ?・・扉を開けるぞ!」
ばん、と大きな音を立てて、扉を開け放つ。
国王「ビビアンは、『建物の中で星空を見つけたら・・』
と言っていたが、星空なんて・・真っ直ぐな廊下しか・・・」
その瞬間、もういやと言うほど聞き慣れた声が響いた。
「ふーん、カゲの女王様を探してるんだ?」
クリスケ「テッ・・」
一同「テレサルーーーッ!?」
テレック「こんな忙しいときに・・よりによって・・」
テレサル「・・言っとくけど、そのままじゃ永遠に女王様は見つけられないよ。
これがないとね」
ぽん、と勇者たちに放り投げられたそれは、
星の形をした不思議な石だった。
クリース「なにかの鍵・・?」
テレック「またそうやってオレ達に見せびらかし・・あれ?
・・ええっ!?テ、テレサル!?お前、どういう風の吹き回しだ!?」
そう。
普段なら、見せびらかすだけで絶対に勇者たちに渡すわけがない、女王のもとへ行くためのもの。
それを自分から、渡した。
テレサル「・・別にいいだろ、なんだって」
キノール「くれるなら、ありがたくもらっちゃうけど・・
でもまた、どうして」
テレサル「・・テレック」
テレック「・・なんだよ?」
テレサル「・・・・・よ」
テレック「え、聞こえな・・」
その時にはもう、あっという間に彼は飛び去っていた。
テレック「なんだったんだ・・?」
クリスケ「・・奇跡だ」
テレック「・・えっ?」
クリスケ「奇跡だよ、これ!
オイラが、あいつからは1%くらいしか善の力を感じない、って言ったのを覚えてる?
それと、悪の心を増大させるような魔法にかけられてる、ってことも。
その魔法が・・きれいさっぱり、消えちゃってた。
夢の世界・・夢の世界で、なにかあったとしか。
とにかく、この鍵は本物だよ。・・ただ、錠前がどこにあるのか」
スターライト『ねえ、その鍵穴だったら、水鏡から見えるよ!
それと・・ここに書いてある呪文を使えば、その鍵を空間移動させることもできるかも!』
ウィッシュ「本当!?」
スターライト『まかせて!行くよ・・それっ!』
ぱん、とテレックの手の中にある星の鍵が消える。と、同時に目の前の床が沈みだした。
キノール「わわわっ!?」
国王「見ろ・・階段が、地下へと続いてる!
それに、この地下の壁の模様・・間違いない、建物の中の星空だ!」
ターベル「よーっし!!行くぜ、みんな!」
リーム「・・待って」
その時、ウィッシュ達から予言を聞いて以来、
ずっと黙っていたリームが口を開いた。
しかも、元の口調で。
リーム「一つ、考えがあるの・・。
女王を止めるためには、これしかない。
あの予言を聞いたときから、考えていたの。
私は・・女王の中にある、私の魂の一部へ、戻るということを」
一同「・・・っ!?」
クリスケ「ちょ・・!?」
リーム「・・私にはわかる!
私の一部が女王の中に残っているから。
プレアたちに残された予言は、本当のことだと!それなら・・それなら、せめて!
女王の中の私の一部とひとつになって、私は内側から女王を食い止める!」
プレア「リーム・・」
キノール「でも・・そんな事をしたら、女王様はどうなるんですか!?」
リーム「・・信じているわ」
キノール「・・え?」
リーム「あなた達を信じている。
女王を倒し、この世界に平和を取り戻してくれると。
そしてまた、あなた達と再会することができると。
そう、信じている」
国王「女王様・・」
リーム「もう、決めたの」
その声と一緒に、リームの姿は、少しずつ薄れていく。
リーム「大丈夫よ、私の勇者たち。必ず、・・必ず、また再会しましょう。
絶対に、女王の野望を止めてね。あなた達なら、きっと大丈夫だから」
クリスケ「・・でも・・女王を倒したとしても、ローズマリー様が・・
・・もしかしたら、・・一緒に」
リーム「そんな顔しないで、フィール。
私は、女王の中にちょっと出かけて、女王の力を内側から押さえつけてやる、ってだけなんだから。
絶対、また会えるわ。自信があるもの。女王の滅びと、平和の訪れと共に。
そうだわ・・プレア、この指輪、一応、今のうちにあなたに返しておくわね。
壊れちゃったら大変だもの。
プレア達も、ありがとう。あなた達がいてくれたから、私はここにいることができる。
みんな、絶対に、また会いましょう。
あなた達に、神の祝福があるように」
その声の響きが消えないうちに、
リームの姿は、そこから消えていた。
国王「・・その指輪は・・。
テレックがいないときに、プレア達と連絡を取るために使った・・?」
プレア「・・ええ、そうです。
星々の国に伝わる、星の光の宿った指輪・・
スターペンダントと同じ、星の光の産物。
だからこそ、私たちと連絡がとれたのでしょう。
・・リームったら。あんなに急いで、行かなくてもいいのに・・」
クリスケ「・・あの、プレア・・オイラ達、ずっと聞きそびれてたけど・・。
女王様とプレア達って・・知り合い・・なんだよね?
スターペンダントもなかったのに、どうして」
ホープ「・・じゃ、話してあげようかな?
次の機会がいつになるか分からないし。
話している間は・・お別れの寂しさが先延ばしになるものね。
ただし、走りながらにしてよ?
時間は無駄にできないわ。真夜中が近づいている。リームのためにも、絶対に失敗はできないわ」
ターベル「ああ、分かってる。・・天秤座・・と。叩くぜ?」
このとき、普通なら、コン、という軽い音がするはずだった。
しかし、聞こえたのは・・
・・カチッ・・
どこかで、スイッチが入ったような音がしたとたん、
目の前の壁が横にスライドする。
テレック「こんな抜け道が・・!」
クリスケ「・・ぅわっ!」
クリース「・・どうかした?」
クリスケ「ううん・・。すっごい邪気がこの道の先から溢れてるみたい。
・・たぶん・・。
ううん、間違いなく。この道の先に、カゲの女王がいる」
一同は顔を見合わせ、頷いた。
そして、いっせいに走り出す——・・。
————————————————————————
リームが星々の国に現れたのは、
・・そうねえ・・今から十五年くらい前かしら?
その前夜に、今まで見たこともないようなとてもとても大きな星が、
幾つか・・七、八個かな・・流れていたから、ああ、なにかあるのかな、とは思っていたけれど。
あ、私たちは多少なら星占いができるのよ。
とにかく・・
その夜が明けた朝、私たちが外に出ると、一人の女の子が倒れていたの。
その子はとても衰弱していて・・何週間も、気を失ったままだった。
でも、ある日、とうとう目覚めたの。
私たちは、その子にあなたは誰、どこから来たの、と聞いたわ。
この子はたまたま、地上の天の川に落ちたのかと思ったの。
それなら、送り届けてあげることもできるでしょ?
でも、その子は、こういっただけ・・
「分からない・・」って。
私たちがどんなに驚いたか分かる?
普通、自分の名前くらいは言える年齢に見えたのによ?
それで・・私たちは、その不思議な記憶喪失の女の子に、
「リーム」というニックネームをつけて、記憶が戻るまで、面倒を見てあげることにしたの。
————————————————————————
その後、数年間、あたし達とリームは一緒に暮らしていたんだけど、
いつの頃からか、姉さん達は不思議なことに気がついていたの。
・・あたしはぜんぜん気にもとめてなかったけど、ね;
リームが、成長していない・・って。
数年間も一緒にいれば、普通、身長も伸びるし、
・・体重とかも;、体は大きくなっていくでしょ?
でもね。何年たっても、リームはあたしより手のひら一つ分、大きいだけ。
あたしは、成長期が終わってるだけじゃないの、って言ったの。
そしたらね・・気づいたのよ、あたしも。
普通の人間なら、髪の毛くらいは、伸びるはずだってね。
ずうっと、同じまんまだったの、リームは。
まるで、時間が止まっちゃったみたいに。
その時・・あたし達は、悟ったの。
リームは、人間じゃなくて、何か特別な存在なんだ、って。
それがね;
運の悪いことに、その事をリームに聞かれちゃったのよ。
それで・・記憶喪失だったリームは・・
自分は人間だ、って思って生きてきたから、相当なショックを受けちゃってね。
リームが、魔法の力を見せたのが、そのとき。
ショック療法・・だったのかなぁ?
地面が、とげみたいに突き出して、・・あたし達、串刺しになるとこだったんだよ;
それでリームったらもっと動転しちゃって、・・その後が大変だったんだから・・;
————————————————————————
そして、それからまた月日は流れ、
やっとリームも自分の存在を受け入れられるようになりました。
それで・・私たちは、この国にいても、リームの記憶は戻らないだろうと分かっていたので、
彼女を地上へと送ることにしたんです。
リームは嫌がってましたけど・・
私たちには、それが一番いいと、分かっていました。
・・今思うと、あれも運命が働いていたんでしょうか?
そして、お別れのときに私は、この国に伝わっていた、古い指輪をリームに手渡したんです。
私たちを忘れないで、記念に持っていって、と。
リームはそれを笑顔で受け取って、
自分は負けないから、大地の精霊として頑張るから、私のことを見守っていてね、って。
・・一度決めたら、たとえ辛いことでも、
逃げ出さないでやりきるのがあの子の性格だったわよね、ウィッシュ?
それで・・私たちは別れました。
あの時の涙を、今でも私は覚えています。
きっと・・永遠の別れになってしまうのだと思ったから。
そう、あなたたちが、五つのスターペンダントの力をその指輪と合わせるまでは。
・・え?
魔法の水鏡はどうしたって?
見ることと、直接会って話をするのでは、次元が違いますよ、フィールさん。
それから・・ある日、突然地上に闇が満ちるのを、私たちは見ました。
そして、その日を境に、リームの姿が、鏡でどんなに探しても、見つからなくなったんです。
リームの暮らしていた辺りもさんざんに荒らされていて、街も崩れていて・・。
その時、突然・・そう、あなた達を鏡は映し出したんです。
それから、ずっと、私たちはあなた達を見ていました。
あの旅立ちのときから・・。
そして。
今、私たちは、ここにいます——・・。
クリスケ「そんなことがあったんだ・・」
プレア「ええ・・。
あの無茶な性格は、ぜんぜん変わってないみたいですけどね。ねえ、ウィッシュ?」
ウィッシュ「うん。
・・だからね、リームがすっごいお上品になってて、・・あたし達、相っ当驚いたんだよ?
でも、やっぱりリームはリームだったね。最初から最後まで・・」
そこまで言うと、ふとウィッシュは顔を伏せた。
ウィッシュ「・・さって!よしっ、絶対にもう一度リームに会って、ちょっとお説教してあげなくちゃ。
ほら、急ごっ!」
プレア「え、ちょ、ウィッシュッ!?」
・・かと思うと、急にがばっと顔を上げたウィッシュは、
プレアの手をひいて、すごいスピードで走っていってしまった。
それを見て、ホープがぽつりとつぶやく。
ホープ「・・無理しちゃって」
キノール「・・え?」
ホープ「ううん、なんでもないの。さ、私たちも急ぎましょう。
・・実感はあまりないけれど、私たちの上には、全世界の明日がかかってるのよね?」
クリスケ「・・うん。もう、絶対、誰も犠牲にしないよ。
カゲの女王・・ちがった、オイラ達の無力さのせいで、誰も泣かせたくないもんね。
・・でも・・。
本当に、もう終わりなんだね。すごく長い長い旅だったけど・・。
女王が街に現れたとき・・ううん、夢の雫国にカゲの女王が現れたときからの、旅」
国王「今度こそ・・。
夢の雫国のように、この世界を滅ぼさせたりはしない。
この広い世界を、人々の夢も、きっと守ろう!」
クリスケ「・・うん!」
ぱん、と二人はハイタッチをかわし、笑いあった。
とはいえ、今のフィールには手が無いので、・・気配で、という事になるのだが。
それでも、二人にはそのことが見えなくても、そのことが十分感じられた。
しばらく後—・・
ウィッシュ「・・道が分かれてる・・!」
テレック「・・どっちだろう・・。
この抜け道は、オレでも入ったことが無かったs・・」
クリスケ「・・、右、だと思う」
クリース「・・フィール?」
クリスケ「こっちの道から、すごく嫌な感じの気配があふれ出てる」
ホープ「・・そろそろ、ってことね?」
その問いに、クリスケがこくん、と頷く。
プレア「さっき、この道に入ってから、そんなに時間はたってないはずですから、
真夜中まで・・残り、40分くらい・・。急ぎましょう」
一同は頷き、再び走り出す。
・・そして・・
キノール「・・・!」
角を曲がったとたん、先頭を走っていたキノールの足が止まる。
その指差す先にあるのは、紛れもなく、扉。
とたん、その扉は音もなく開いた。
ターベル「・・覚悟はいいな」
クリース「ああ・・」
そっと、その扉の向こうを盗み見る。
どうやら、その部屋は・・
国王「玉座の間の、一つ手前の部屋だ・・!」
クリース「・・つまり・・この向こうの部屋が玉座の間、ということは・・」
全員の目が、部屋の奥の扉に向けられる。
王家の紋章の刻まれた扉。
——・・あの扉の奥に。
クリスケ「さあ・・行こう!
最後の戦いに!!」
そして、誰からともなく、扉に手をかけ、大きく、開け放つ。
最後の戦いの扉が、今開いた———・・。
ファイナルステージ、前半へ・・。