ステージ7−13 魔物部隊VS元魔物部隊
テレサル「ちっ・・!みんな、行けッ!!」
ビッ、と白い手が勇者達を指す。
魔物「ケケケケケ・・」
テレサル「総攻げ・・」
キノール「炎の魔法よ!」
クリース「風の魔法よっ!」
・・ゴオオオオオッ!!
魔物「キイイイィーッ!!」
テレサル「・・なっ!?」
キノール「ザコは僕らに任せて!
みんなは、テレサルを・・それと・・リームを守って!」
ターベル「了解っ!雷の魔法よ!」
バシイイイインッ!
テレサル「・・こうなったら・・!
・・闇の呪いよっ!!」
・・バシイイイインッ!!
テレサル「くっ・・!」
テレサルの赤い目が、さらに不気味に輝いた。
リーム「きゃああっ!」
キノール「リーム!大丈夫!?」
リーム「なんとか・・外れたから」
クリスケ「闇の呪い・・」
震える声でつぶやく。
クリスケ「生前・・オイラを消した魔法だ・・」
テレック「・・テレサル、闇の呪いだなんて・・!
闇の呪いを使うなんて・・なにバカな事やってるんだ!?」
テレサル「・・いまさらなに?
別に、テレックがいない間もずいぶん使ったけど。なにか文句でも?」
テレック「大有りだね!!」
血相を変え、テレックが詰め寄る。
テレック「お前だって分かっているだろう!?
その者の善の心をむしばみ、悪の心をどんどん増幅させる、使うものをも呪われる魔法!
使いつづけると正気と記憶を失って、魔物になるって事だって!」
キノール「・・テレック、今、あいつは女王に操られてるからしょうがな・・」
クリスケ「・・違う」
キノール「えっ?」
クリスケ「感じたんだ・・。確かに操られてるけど、ふしぎの森や今さっきの魔物とは種類が違う。
あの呪いは、自分の意思で放った物だよ。
たぶん、女王に悪の心を増大させる魔法をかけられた、とか・・そっち方面だと・・」
ターベル「じゃあ・・」
クリスケ「もともとは、多少は・・善の心もあったんだろうけど・・今は」
下を向く。
クリスケ「・・あいつからは1パーセントくらいしか、善の心を感じない」
テレック「テレサル・・」
テレサル「なに?」
テレック「以前、部隊にいたとき・・
お前は確かに、女王の忠実な家来だった。
でも・・ここまで残酷で卑劣で冷淡な奴だった覚えはない!」
テレサル「結構だね。だったらなんだって言うわけ?
こっちとしては、さっさとローズマリー女王を始末して、女王様を完全にしてさしあげたいんだ。
無駄話している時間はないんだよね」
テレック「・・そうか。・・じゃ、あの約束ももう、すっかり忘れちまったと?」
テレサル「・・はあ?約束?なんのこと?」
くるり、とテレックが振り返る。
テレック「・・ごめん、みんな。テレサルとは・・あいつとは、オレが一対一で決着をつける。
魔物から、リームを守ってくれ」
ターベル「は!?何言って・・あいつ、女王の支配化にある事を忘れたのか?
そもそも、お前一人でかなうかなんて・・」
テレック「ああ、分からない。でも・・元魔物部隊の一人として」
くるり、とテレサルに向き直る。
テレック「テレサル・・勝負だ!」
テレサル「ふぅん、まあいいよ。
テレックの事、前々から・・お前が部隊を裏切った時から・・じゃまだと思ってたんだよね!
一対一、白黒決めようじゃないか!」
そして二人のテレサは、開け放たれた窓から外へ飛び出していった。
ステージ7−14 二人のテレサ
テレサル「さあて。それでは・・先手必勝とさせてもらおうかな!雷の魔法よ!」
バシ・・バチィンッ!
テレックの生み出した盾が、雷を弾き飛ばす。
テレサル「さすがはテレック、これくらいじゃだめか。
じゃあ・・これでどうかなっ!?」
ブワアアッ・・!!
テレサル「行けえっ!」
ビッ、と手を振り下ろす。
手の動きに合わせ、空中に生まれた無数の氷の矢が、テレックに向かう。
テレック「炎の魔法よ!」
ゴオオオオオッ・・!
生まれた炎は、氷の矢を全て消し去った。
テレサル「さっすがぁ!」
テレック「・・・」
テレサル「で・・テレックは何もしないわけ?一対一だの勝負だの言い出したのはそっ・・」
テレック「テレサル!」
鋭い声が飛ぶ。
テレサル「・・なにさ」
テレック「覚えていないのか、本当に!?あの満月の晩にした約束を!」
テレサル「・・・」
テレック「答えろ!炎の魔法よ!」
ゴオオオオッ!
テレサル「水の魔法よ!」
・・ジュウウ・・
テレサル「・・ああ、覚えてないね、覚えてないさ!」
・・ビッ!
テレサル「・・っつ!?」
氷の矢が一本、テレサルの脇をかすめる。
テレック「・・お前のウソは、分かりやすい」
テレサル「なにを・・」
テレック「あの満月の晩、初出兵の晩、オレ達は約束したじゃないか!
まだZクラスで、何も知らなかった頃に!」
テレサル「・・・」
テレック「自分の誇りを捨ててまで、任務は犯さないと。
人の生命に手をかけるような事はしないと!」
テレサル「・・ふん!」
ばっ、とテレックの手を振り払う。
テレサル「よくそんな事が言えるもんだ!
第一、お前だってあのノコノコ潰しの指令にはしたがっていたじゃないか!
あの指令を受けた時、始めからそのノコノコを消す事は分かっていた!
だがお前は、指令に従い、今のお前の仲間たちの生命の火を消す所だった!」
ブン、と手を振り、テレサルは雷の剣を呼び出した。
テレサル「違うのか!?勇者よ!」
ガキィィンッ!
同じくテレックも呼び出した雷の剣が、テレサルの剣を受け止める。
テレック「・・そうさ」
テレサル「ああ!?」
テレック「そのとおりさ!
あの時のオレは、それこそあの満月の晩の約束を忘れ、誇りも捨て、任務を犯していた!
・・だがそれは」
ガキィンッ!
テレック「・・過去の話だ」
テレサル「・・な」
テレック「オレは、自分のした事にあの時気がついた。自分のやってきた、愚かな事に!
だから今は・・以前の仲間のお前と、戦う!」
バシィンッ!
テレック「・・そう。だからこそ。
自分の犯した事を分かっているからこそ・・今のオレはお前を許さない!
さっきの闇の呪いだって・・分かってるのか!?
闇の魔法とは格が違う、自分自身にも跳ね返る呪い・・魔法だと言う事を!
魔物になっていく魔法だと言う事を!
それを知っていて、わざわざ女王のためにそれを使うのか、テレサル!」
テレサル「知っているさ、もちろん!女王様のためなら、喜んで魔物になるね!」
テレック「・・なぜだ?」
テレサル「なぜ?」
テレック「なぜ、女王にそこまで忠誠を誓う?」
テレサル「なぜって・・。・・それは・・」
テレック「・・テレサル。オレは・・。
・・あの満月の晩の約束を、今果たす!・・覚えているか、あの約束の最後を」
二人の声が、重なる。
決意を込めた声と、苦々しい声。
『もし約束を破ったのなら、片方が片方の目を覚まさせるー・・』
テレサル「だからなんだ・・。だからなんなんだ!?
お前がオレの目を覚まさせるとでも!?あいにくだが、もうじゅうぶん覚めているさ!
そもそも、約束を破ったのはお前もじゃないか!いいかげんに黙れ、うるさいぞ!」
テレック「・・そうさ、約束を破ったのはオレも同じ。だから・・全力で、いく」
きっ、と顔をあげる。
テレック「以前のお前にー・・、イタズラ好きのちょっとひねくれた、
それでも根は優しかったテレサルに、戻るんだ!」
テレサル「黙れっ!だま・・」
テレック「オレは知ってる、本当のテレサルを!目を覚ませ!」
テレサル「・・黙れ、黙れえっ!!!」
・・一瞬、赤い目に青い光が宿る。
テレック「(・・ごめんな、みんな)」
小さくため息をつくと、声を張り上げ、唱えた。
・・そう、テレサルも。
テレック「光の魔法よっ!!」
テレサル「闇の呪いよっ!!」
ドオオオオオ・・ン・・!!
・・薄れる意識の中で、
ターベルの声が聞こえたのは、気のせいだったのだろうか?
ステージ7−15 夢の魔法
二人のテレサが外へ飛び出した、その直後の事・・。
ターベル「テレック、待てっ・・」
キノール「・・まだ完全に回復したわけじゃないのに・・!」
ターベル「あのバカ・・!」
ばっ、とターベルが窓から身を乗り出す。
ターベル「テレックーッ!!」
クリース「ターベル、危ないっ!」
ターベル「これくらい平・・」
クリース「違う、後ろだっ!雷の魔法よ!!」
バシイィンッ!
魔物「キイイイッ!」
ターベル「・・わっ!まだいたのか、そいつら!?」
国王「スターシューティングッ!」
ザザザザザッ!
ポウウウ・・
魔物「ケケケケケッ・・!」
クリスケ「ああもう、キリがないよお・・!・・こうなったら」
・・大丈夫かな、と呟く声をカーレッジは聞き逃さなかった。
国王「何する気で・・」
クリスケ「・・えぇーいっ!!」
キィーンッ!!!
高い音と共に、全ての魔物の動きが止まる。
魔物「ギイイイイイッ・・!!」
クリスケ「今・・今、魔物の動きを止めてるから、今のうちに逃げてっ!
ローズマ・・リームを守って、逃げて!」
キノール「・・なに言ってるの!?クリスケは!?」
クリスケ「オイラは後から行くから・・!とにかく、リームを守ってっ!
オイラの力も、そんなにはもたな・・」
リーム「・・その必要はありません」
クリスケ「だから・・へっ!?」
にこ、とリームは微笑む。・・悲しさをひめた笑顔で。
リーム「だんだん思い出してきた・・。今なら、この力も使えるわね」
小さく呟くと、大きく手を広げた。
リーム「夢の魔法よ、私に力をかしてっ!」
・・ぱちんっ!
シャボン玉が割れた音をそのまま大きくしたような音が広間に響き、
音の波紋が消えた後には、リームと勇者達の姿は消えていた。
ステージ7−16 リームの過去
キノール「な、なに!?今の!」
リーム「・・夢の魔法」
全員の注目が、リームに集まる。
リーム「夢の魔法の力で、瞬間移動したんです。・・今の私でも、少しだけなら使えるから・・」
クリース「・・リーム?あの、さっきからなんだかんだで聞けなかったけど・・・・どうしたんだい、急に?」
キノール「あ、僕も同じ事聞こうとしてた。なんか急に・・口調とか性格とかが」
ターベル「オレも同じさ。ただ、オレの場合はもう一つ」
くるり、とターベルがクリスケとカーレッジを振り返る。
ターベル「二人は、なにか知っているみたいだけど?」
クリスケ「あ・・その」
リーム「・・私から話しましょう」
ターベル「リーム?」
リーム「私は・・」
声が、小さく震えている。
リーム「・・私は、リームという名の存在ではなかった。
あのテレサルが・・私の事を、ローズマリーと呼んだでしょう?
あの時はまだ分からなかったけれど・・あいつが放ったエアカッターがきっかけで」
リーム「・・ある事を、思い出したの・・」
一粒の涙がこぼれた。
リーム「こんな事を言っても、分からないとは思うけれど・・
私は・・今、あの影の女王が憑依している人物の、・・ローズマリー女王の、魂のカケラなのです。
ずっと、忘れていた・・。この世界にはじき飛ばされてから。
あいつのエアカッターと同じ物で、私は、・・私は・・っ!」
クリース「リー・・」
リーム「ごめんなさい、こんな事あなたたちに言っても、仕方がない事は分かっている・・でも・・!
私は・・そうよ、私は、大切な友達を大勢この手で・・消してしまった!
憑依されていたとはいえ、止めることができなかったの・・
ああ、ごめんなさい、あなた達に、何も知らないあなた達にいきなり訳の分からないことをまくしたてて・・
私は・・そんな存在だったの・・っ!
影の女王に憑依され、はじき飛ばされ全てを忘れた、
今はなき夢の雫国の女王・・大地の精霊として夢幻のように存在していたのが、
リームだったのよ・・!」
もう一度ごめんなさいと叫ぶと、
リーム・・ローズマリーはそのまま泣き崩れる。
ターベル「あ、あの・・リー・・じゃなかった、・・ローズマリー?」
クリスケ「・・ターベル」
ターベル「うん?」
クリスケ「さっきの質問、今答えるよ。・・いいよね、カーレッジ」
国王「まあ・・もう、しょうがないんじゃないか?」
クリスケ「うん。・・プレアとオイラ達が初めて出会った時、プレアがオイラ達に言った事を覚えてる?」
ターベル「・・えーと・・えー・・とぉ・・。・・なんだったけか?」
クリース「・・代弁するよ。
前世のときにも私たち六人は女王と戦い、その時は敗北してしまった・・だっけ?」
言葉を切り、息を呑む。
クリース「・・まさか」
国王「そう、そのまさかさ」
苦笑すると、カーレッジは、ローズマリー女王に近づいた。
国王「・・ローズマリー女王様、その事はもういいですよ」
リーム「・・えっ?」
国王「お久しぶりです、ローズマリー女王様。
女王様と同じく・・私も前世の記憶を取り戻しています」
クリスケ「そう、オイラも・・」
リーム「あなた達は・・!」
国王「女王様が幼かった頃は、リームそっくりの性格をしていた事も覚えていますよ。・・なあ?」
クリスケ「本当に、今考えるとそっくりだね。お久しぶりです、女王様。
・・あなたに仕えていた、フィールです」
国王「同じく・・カーレッジです・・」
女王はアメジスト色の目を見開き、もう一粒の涙をこぼした。
ステージ7−17 (サブタイトル未定)
クリスケ「・・黙っててごめん、みんな」
クリスケが、仲間に向き直る。
クリスケ「オイラ達は・・前世の世界でも、王宮に住んでいた、仲間だったんだよ。
・・全てを話す事は、できないけど」
リーム「・・驚いたわ、本当に」
あれきり、一向はテレックを探すために歩き始めていた。
ターベル「えーと・・つまり、まだ混乱してるけど・・
あの時ローズマリー女王様、って叫んだのは、前世の記憶の登場人物だったからって事か?」
国王「ああ、ついな・・フィールのときもそうだったけど」
ターベル「まだよくわかんないな・・。・・ま、オレもそのうち前世の記憶が戻るかもしれないんだし。
その時に分かるだろうから、いいか・・」
キノール「要約すると、・・リームは女王様だった、と」
クリスケ「そういう事に・・」
キノール「うっわあ・・。じゃあ僕らは、すっごい人と普通にタメ語で話していたと・・」
国王「・・ちょっと待て、私だって一応は、この世界では王だぞ」
キノール「ああ、そういえば」
国王「…」
クリース「ひとつ聞いて言いかい?
じゃあ・・リームが魂のカケラって事は、カケラって事は・・まだ一部が影の女王の所にあるって事だろう?
じゃあ、もしリームがテレサルに消されてしまったら・・」
リーム「テレサルの言った通り。・・影の女王は、完全となる。
私が消えたとたんに、女王の中の私のカケラも消滅して、女王を阻むものはなくなる。
そうしたら・・誰も、・・女王自身も、彼女を止める事はできないわ」
クリース「じゃあ・・!」
リーム「大丈夫。もう自分の身は守れると思うから・・。心配しないで下さい」
ターベル「なあ、そっちの話も重要だけどさ・・。テレックだぞ、今の問題は」
キノール「どこ行っちゃったんだろう・・。クリスケ、・・なにか感じない?」
クリスケ「じゃあ一回、やってみる・・」
先ほど、魔物を止めるのにかなりの力を使ったクリスケは、しばらく超能力がなくなっていた。
キィーンッ・・
クリスケ「・・分かった!」
ターベル「どこだ!?」
クリスケ「探しても見つからないはずだ・・二人がいるのは、城のはるか上空の雲の上だ!
どうしよう・・とてもじゃないけど、助けに行けないよ。オイラの力でも、とどかないし・・」
リーム「私なら・・」
クリスケ「えっ?」
リーム「私の夢の魔法の力を使えば、一人くらいそこまで飛ばせてあげられるかも・・」
ターベル「それなら」
ターベルが、一歩前に出る。
そして自分を、指差した。
ターベル「このオレが行くぜっ!」
ステージ7−18 夢の翼
リーム「・・準備はいいですね?」
ターベル「ああ」
リーム「・・ターベル。本当に、気をつけて。
夢の魔法の力は、それほど当てにならないから。飛べるとはいえ、それは一瞬の夢と同じ。
急に夢が覚めて、落ちる可能性も否定は出来ないんです」
ターベル「う・・分かってる」
リーム「大丈夫、とは思うけれど。皆さんも、すみませんが・・
今回は、かなりの集中力がいるので、まちがっても私に話しかけたりしないでくださいね?」
微笑んではいても、強い口調だった。
ちなみにローズマリーではなく、リームがこのセリフを言った場合、
『いい、今度のはすうっごく集中しなきゃいけないんだから、
ぜーったいに!話しかけないでっ!本当にこの魔法は当てにならないんだから・・。
話しかけられたせいで魔法の効果が切れて、ターベルが落っこちても知らないからねッ!!』
と、睨みつけられる事になる。
クリース「了解!」
リーム「それでは」
スッ、と瞳を閉じ、リームは唱える。
リーム「夢の魔法よ!」
・・ふわり。
ターベル「わっ・・本当に浮いた!
・・って、ちょっと待って?どう進むんだ、これ?」
クリスケ「簡単簡単!自分の思ったとおりに体が動くはずだよ。
さっきから、テレック達は移動してないみたいだから・・
ここからまっすぐ上に飛んで。そこにいるはず!」
ターベル「ああ、分かった。——ところで、なんで飛び方知ってるんだ?」
その問いかけに、クリスケは苦笑する。
クリスケ「昔、ね。飛んだ事があるんだよ、オイラ。そのときは」
国王「見事に墜落したけどな」
ターベル「…。もういいよ、行ってくる・・。みんなは、そこで待っててくれよな?」
キノール「健闘を祈るよ」
クリスケ「なにかあったら、こっちからオイラが連絡するからさ」
親指をあげてOKサインを出すと、ターベルはあっという間に、上空へ向けて飛んでいった。
ターベル「テレックーッ!いたら返事してくれーッ!」
あれからしばらくのち。
クリスケの言う通り、上へ上へと飛んでいるんだけど、
二人のテレサは影も形もないわけで。
まいったなぁ・・。
もうかなり高い位置まで飛んできたはずなんだけど。
どこかですれ違ったとか?
ターベル「・・ありうる。ちょっと高度を下げてみ・・」
自分の考えに納得して、目線を下にむけたそのとき!
・・ヒュンッ!・・ザッ!
ターベル「はいいい!?」
視界をかすめ、オレのバンダナにひっかかった銀色の影。
それはまぎれもなく・・。
ターベル「氷の矢!?なんでこんなのがこんなとこに!?」
・・ガキィィンッ!
そのとき微かに、剣げきの音が聞こえたんだ。
ターベル「まさか!」
オレは上を振り仰ぐ。雲の晴れたその先には。
ターベル「・・見つけた!テレック!」
一直線に飛んでいこうとした、その瞬間。
・・がくんっ!
ターベル「・・っ!?」
かすかなローズマリーの悲鳴が、地上から響いた——。
ステージ7−19
キノール「うわあ、ターベル、もう見えなくなっちゃったよ」
クリース「とりあえず今は、無事を祈るしかできないな・・。
・・カーレッジ、夢の魔法ってどのくらいもつんだい?」
国王「うーん・・。普通、夢の魔法は短時間で使う物で・・、今みたいに長時間使うには向いていない。
どのくらいもつかは、私にも・・でも」
意味ありげに二人が目配せをする。
クリスケ「いざってときは、オイラがなんとかできると思う。
ゆっくり落ちさせるとか、なんとか・・」
キノール「大丈夫、だよね!うん!」
それからしばらく会話は途切れ、勇者達は空を見上げ続けるかたちとなる。
・・その時。
クリスケ「・・?」
訝しげな表情で、クリスケが一点を振りかえる。
国王「どうした?」
クリスケ「ん・・なんか、妙な気はいがして・・。気のせいかな・・?」
国王「気はい?」
クリスケ「いや・・もしかして・・まさか!」
バッ、とクリスケが立ちあがる。
クリスケ「みんな、気をつけてっ!」
クリース「え・・?」
一点を見つめたまま、クリスケが叫ぶ。
クリスケ「・・姿を現せっ!」
キイーンッ!!
ポウウウ・・
あの嫌な音と共に現れたのは、先ほど広間で戦ったばかりの相手たち。
魔物「ケケケ・・ミヤブルトハサスガダナ」
キノール「まっ、魔物!?まさか、追いかけてきたのか!?」
魔物「ゴメイトウ・・ケケケ」
クリスケ「とにかく、戦うしかない!・・っと、そうだ」
キイーンッ!
リームに迫っていた魔物を弾き飛ばし、バリアを作る。
クリスケ「女王様はこれで大丈夫・・防音効果もあるから、夢の魔法ももつはず。
オイラ達四人で、ここでなんとかするしかない!
そもそもこのバリアもそんなには・・」
キノール「分かった!炎の魔法よっ!」
クリース「雷の魔法よっ!」
ドオオオオ・・ン!!
国王「やったか!?」
ポオオ・・
クリスケ「また新しいのが・・!」
残った魔物たちは分裂を繰り返し、あっというまに数はもとに戻ってしまった。
クリース「一気に全滅させるしかないみたいだな・・。みんな、援護頼むっ!雷の魔法よ!」
国王「ああ!スターシューティングッ!」
クリスケ「任せてッ!星の魔法よ!」
キノール「僕だって・・炎の魔法よっ!」
ドオオオオオン・・!!
魔物「ケケ・・ケケッ」
クリスケ「・・これでもだめ!?」
キノール「どうしよう・・スターペンダント・・使っちゃう?」
クリース「いや、バレるのはまずいと思う・・とりあえず、今はターベルとテレックが戻るのをまとう!
全員そろえば、なんとか・・」
国王「ああ!とにかく今は・・」
クリスケ「ローズマリー様を守らないと・・!!」
キイーンッ!
そう言いながら、超能力で魔物を数匹弾き飛ばす。
キノール「ターベルとテレックを守るために・・もっ!」
ドカアッ!!
クリース「ターベル・・急いでくれ・・!」
・・そして。
キノール「ぜいはあ・・全くもう、こいつら、本当にこりないなあっ・・!」
魔物「ケケ・・オマエラモナ・・ケケケ」
バシィンッ!
クリスケ「っつ・・!」
国王「フィール!」
クリスケ「・・たた、このくらい平気だよ。・・ただ、そろそろバリアが・・もたない・・」
クリース「ターベル・・」
魔物「ケケ・・ソロソロ、ケッチャクヲツケヨウ」
・・ふっ。
勇者たちのまわりから、魔物が消える。
キノール「なっ?」
クリスケ「危ない・・っ!来る!!」
ポウウウウ・・ッ!
魔物「ソウコウゲキ!!」
ドドドドド!!
魔物たちは息をそろえ、いっせいに攻撃を仕掛ける!
キノール「くっ・・!炎の魔法よ!」
国王「スターシューティングッ!」
クリース「雷の魔法よっ!」
クリスケ「・・ローズマリー様に触れるなっ!」
キイィーンッ!!
・・ドッカアアン!!
女王に向けて突撃してきた魔物は、ほとんどがばらばらに散った・・
・・が、弱りきったバリアには、魔物一匹の攻撃でじゅうぶんだった。
クリース「・・しまった!」
バシィンッ!!
・・フッ
国王「バリアが・・!!」
クリスケ「女王様—・・っ!!」
夢の魔法に集中していた女王が、顔を上げる。
リーム「・・えっ!?」
魔物「・・カクゴ!」
ビシイイイッ!!
リーム「きゃああああっ!」
その頃、上空では・・。
ターベル「うわああっ!?」
なっ、なんなんだ、急に!?
うわっ・・と!上がったり下がったり・・!
これじゃあ、暴れ馬に乗ってるみたいだぞ!?
うわっ!
ク、クリスケ!思ったとおりに体が動くんじゃなかったのか!?
あーもう、テレック!
人がすぐ近くで悲鳴あげてるんだから、
いいかげんに気づけよおおお!!
・・って、だめか・・。
戦いに集中してて、こっち振り向きそうな
ふんいきじゃないしなあ・・。
・・ぎゃ!また高度がっ!ああもう、
テレックはすぐそこに見えてるっていうのに・・。
がくんっ!
ターベル「うわっ!」
うわ、今のは・・
十数メートル、落ちたんじゃ・・。
ターベル「くっそお・・!」
オレは、キッと上を見上げる。
意地でも、意地でもあそこまで行ってやる!
そもそもオレは、テレックを助けに来たんだ!
なんとか・・なんとかしないと・・!
—その時、二人のテレサが手を振り上げたんだ。
ターベル「・・まさか!」
オレの表情は凍りつく。
かすかに、でもはっきりと、
『光の魔法よ』と唱える、テレックの声が聞こえたんだ。
ターベル「ちょ、ちょっと待て・・あのバカッ!」
そのとき、運が良いのか悪いのか、体が上昇を始めた。
ターベル「テレッ・・うわっ!」
光と闇とが、ぶつかり合った。
・・ドオオオオオ・・ン・・!!
ターベル「テレックーーーッ!!!」
ステージ7−20
ターベル「テレック、危なーいっ!!」
ぱしっ!
ターベル「セ・・セーフ・・」
オレは、気絶して落下し始めたテレックの手を、なんとかつかんだ。危ない危ない・・。
テレサといえども、気絶すれば落ちるよな、普通。
ターベル「お前、バカか!?空中で光の魔法を使うなんて・・!
オレが来なかったらどうするつも—・・」
そこまで怒鳴って、ため息と一緒に口をつぐんだ。
・・はあ。気絶した奴に説教してもしょうがないよな。全く、なんでこんなムチャ・・。
ターベル「—・・ん?」
ふと下を見ると、オレの足に巻いたバンダナに、
気絶したテレサルが雷の剣ごとひっかかっていたんだ。
・・しかたないな・・。
敵とはいえ、ここで気絶した奴を見捨てるなんてできない。
そもそも、ここでこいつを放したら、地上にまっさかさm・・いや、考えない事にしよう。
ため息をつくと、オレは足のバンダナにひっかかったテレサルを引き上げ始めた。
———————————————————————
クリスケ「ローズマリー様っ!!」
リーム「・・大丈夫、これくらい・・。ごめんなさい、今は夢の魔法に集中させ・・」
バシィンッ!!
リーム「きゃあっ!」
国王「スターラインッ!!」
ザンッ!!
国王「女王様から・・離れろっ!!」
魔物「ケケ・・ワカッタヨ」
キノール「へっ?」
魔物「ケケケケケッ!!」
笑い声と共に、攻撃の矛先がクリスケに向けられる!
クリスケ「わああっ!!」
国王「フィールッ!」
キノール「今助けるっ!炎のま・・」
クリスケ「だ・・だめだっ!!オイラの事より、女王様を——・・っ!!」
キノール「えっ・・?」
・・ふっ・・
さっきと同様に、魔物達が消える。
ポオオオ・・!
魔物「イケエッ!!・・コレヲ、ネラッテイタノサ!
オマエタチノキヲソラシテ、ジョオウヲ、トリカコムチャンスヲネ!」
国王「しまった・・!スターシューティングッ!」
魔物「オソイ!コウゲキカイシ!!」
魔物全員の攻撃が、リームに向けられた。
リーム「きゃあああああ・・っ!!」
・・ドサッ
クリスケ「・・女王様ーーーーっ!!!」
——————————————————————
ターベル「さて、そろそろ、みんなの所に戻・・」
がくんっ!
体が落ちたのは、その時だった。しかも、今までとは違う落ち方。
今まで上がったり下がったりはしても、こんな激しく落ちる事はなかったぞ!?
まさか—・・。
夢の魔法の・・効果切れ・・っ!?
ターベル「うわああああーーーーっ!!!」
落ちる———・・
テレック(とテレサル)まで、一緒にっ・・!
ステージ7−21 夢の光
キノール「・・許さない・・っ!
風の魔法よ、炎の魔法よ、奴らを追いはらえっ!!」
ゴオオオオッ!!
魔物「ギイイイィッ!」
クリスケ「ローズマリー様から・・離れろっ!!星のま・・」
国王「・・待てッ!」
クリスケ「カーレッジ?なんで止めるのさっ・・」
国王「ローズマリー様が・・!」
クリスケ「・・えっ?」
視線を向けると、ローズマリーの体がほのかに光り、周囲の空気も揺らいでいる。
クリスケ「そうだ・・!
夢の魔法を使っている時に気を失ったら・・!!」
キノール「・・どうなるの?」
国王「行き場を失った夢の力が・・」
その間も、ローズマリーの光は輝きを増していく。
魔物「ナンダ・・?」
クリスケ「夢の力が暴発するんだっ・・!」
キノール「なんだって・・!?」
クリスケ「それで、その光に当たったら・・ああ、話は後でっ・・伏せてぇっ!!」
その時。
「うわあああーーーっ!!」
クリース「タ・・ターベルッ!?」
ターベル「と・・止まんないぜええ!これえっ!」
クリスケ「ま・・待って!今止めるから—・・」
キイーンッ!
・・カッ!!!
超能力の音と同時に、ローズマリーの光も爆発した。
クリスケ「やば・・っ!」
キノール「うわあああっ!!」
魔物「ギイイイイィッ!!」
クリース「光に当たるなって言われてもむ・・
・・うわああっ!!」
国王「キノール、クリースッ!!」
クリスケ「ターベル、テレックーーッ!!」
・・ドオオオオン・・!!
ステージ7−22 夢の魔法の真実
クリスケ「う・・いたたた・・。み、みんな、大丈夫?」
国王「く・・私はなんとか・・。大丈夫だ・・。・・みんなは・・?」
クリスケ「キノール達は・・」
言われて初めて、周りを見渡す。
暴発したローズマリーの夢の力はすさまじく、魔物たちまで一人残らず吹き飛ばされている。
そして・・見つけた。
クリスケ「あそこ・・!
キノール!クリースまで!しっかりしてっ!」
国王「フィール!ここにターベルとテレックも・・あと、なぜかテレサル・・もいるぞ!
ただ、三人とも、気を失ってる・・」
クリスケ「こっちもだめ・・。夢の光がもろに当たっちゃったみたい・・」
国王「まいったな・・」
その時、クリスケのペンダントがほのかな光を放った。
ポウ・・
『つ・・通じたっ!?って、それどころじゃない!
な、なに、今のは何!?クリスケ!聞こえるッ!?』
クリスケ「ス、スターライト??」
ウィッシュ『ちょっとスターライト、どいてよ!
訳わかんないわ!急にリームが上品になるし、リームがまか不思議な魔法使ってるし、
いきなり魔物がわんさかでてくるし、
ターベルが空飛んでるし、いきなり爆発が起きて通信がつながるし!
ちょっと、クリスケ、聞いてるのッ!?』
クリスケ「ちょ、ちょっと、落ち着けってば!水鏡でこっちの事は分かるんじゃなかったの??」
プレア『それが・・鏡に寿命がきたらしくて、映像しか映らないんです。
音声は分からないの。だから、そっちの事情はあまり・・』
ホープ『今はお互い無駄話してる場合じゃないわ。
今の爆発とリームの魔法についてだけ教えて!二人は何か知っているんでしょう!?』
国王「分かった、ただ少し待ってくれ。みんなを安全な所に移さないと・・」
ウィッシュ『あああ!分かってないなあ!この連絡回廊はせっかちなんだからあああ!』
ホープ『・・分かったわ、ウィッシュはほっといてみんなを安全な所へ移して。
ただ、急いで!ウィッシュの言う通り、すぐに連絡回廊は閉じてしまうから—・・』
国王「ここなら多分・・」
ウィッシュ『なあに、そこ?』
国王「礼拝堂の裏だ。礼拝堂の近くはあまり魔物が近づかないようだから」
ウィッシュ『闇の宮殿に礼拝堂ー?』
クリスケ「・・一応、カゲの女王に魔法でかなり改造されてるけど、元この国の王宮だよ、ここ?」
国王「他の所は面影もなく変えられていたが、この周辺だけはたいして変わっていないんだ。
・・とにかく、さっきの質問に答えるぞ。まず、夢の魔法—・・」
軽くため息をついて、カーレッジは話し出す。
国王「夢の魔法は・・。想像力が生み出す、特別な魔法なんだ。
多分、この世界で使えるのはローズマリー様・・つまり、リームだけだと・・。
呪文を唱えて想像すれば、なんでも現実になる」
スターライト『えええ!?それって、かなり恐ろしい魔法じゃ・・』
クリスケ「ううん。その魔法の特徴はね、物に害を与える事ができないんだ。
想像してケーキを生み出す事はできるけど、どんなに想像しても、物に傷一つつける事はできない」
国王「あと、意思を変えたり、神の領域の物は無理だな。
人の心に働く事はできないし、生命を生み出したりも無理・・、
あとは、—・・死者の復活も不可能」
・・最後の言葉は、自分自身に言うように呟いた。
クリスケ「ええと、まとめるとね、夢の魔法は想像力が生み出した、
現実に映し出された夢・・って言うのかな?
でも、本当の夢と同じで、集中力が切れるとすぐに消えちゃう、儚いものなんだ」
ホープ『なるほどね。そこまでは分かったけど・・じゃあ、今さっきの爆発は?』
クリスケ「ええと・・。夢の魔法のエネルギーは、すさまじい物って言ったよね。
そこで、その力を使う者・・力を押さえる者が気を失うと、エネルギーが爆発しちゃうわけ」
ウィッシュ『そこは分かってる!
今聞きたいのは・・他の四人が、光に当たった四人がどうなっちゃったの!?
・・って事なのっ!
さっきから全然意識が戻ってないし、心配でも、あたし達は看病しにすら行けないんだからっ・・!』
クリスケ「・・・。・・それは・・。」
一瞬の沈黙。
クリスケが助けを求めるように、カーレッジを振りかえる。
これから話す事が重い内容だという事を示すように。
国王「・・分かった、私が話そう。
夢の魔法のエネルギーに当たった者は、気絶しているローズマリー様の夢の中に・・飛ばされるんだ。
その夢の中で、現実に通じる扉となる物を見つけない限り、
飛ばされた者は・・、意識を取り戻す事ができない。扉を見つけられない事には・・」
・・永遠に、現実に戻ってこられないんだ—・・。
ステージ7、終編へ・・。