ステージ7−23 ローズマリーの夢の世界1
ウィッシュ『なんですってえ!?
・・じゃあ、つまり、運が悪かったらこの四人は・・五人か、
この五人は永遠に眠りっぱなしって事!?』
クリスケ「そういう事に・・」
ウィッシュ『信じられない!—・・こんな、最終決戦の場まで来て、こんな展開なの!?
ああ、できる事ならそっちに行って、枕でもなんでもぶっつけてやるのに・・!
でも、あたし達は・・』
ペンダントから聞こえる声が、ふいに暗く沈んだ。
ウィッシュ『みんなが心配でも、助けに行ってあげたくても・・。行けないんだものね・・』
クリスケ「ウィッシュ・・」
ウィッシュ『・・こんな、こんな、何も出来ないあたし大っ嫌い!』
・・バタンッ!
クリスケ「え、ちょっと!?」
ホープ『ごめんなさい・・気にしないで。ウィッシュったら・・。
心配なんだろうとは思うけど・・。
いっつも魔法の水鏡の前に陣取ってるし、あなた達がピンチの時は、ヒステリー起こしてるし。
そりゃあ私たちも、あなた達の手助けができればどんなにいいか』
クリスケ「心配しないで。・・みんななら、きっと大丈夫。オイラも大丈夫だったから」
スターライト『・・へ?』
クリスケ「前の世界でもね、オイラ、夢の世界に飛ばされた事があるんだ。
その時は帰ってこられたから、きっとみんなも大丈夫」
プレア『でも・・やっぱり心配です。・・なにか、私たちにできる事はないでしょうか?』
国王「今は、ひたすら無事を祈る事。それしかできないな・・」
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ターベル「・・キノール・・。キノール、起きろ!」
キノール「うーん・・?あと五分・・」
ターベル「起きろっつーの!!」
バコッ!
キノール「わああ!?」
キノール「あいっ・・たたたた・・。ターベル?なにがどうなったの・・?」
ターベル「聞きたいのはこっちだぜ・・。とにかく・・クリース!キノール見つけたぜ!」
キノール「見つけた?なんのはな・・」
言葉を続けながら、
まだボンヤリした頭で、ようやく周りを見まわす。
そして、・・ようやく気づいた。
キノール「・・はあっ!!?」
クリース「キノール!こんな所にいたのか!」
キノール「ククク、クリース!?なに、なにがどうなったの!?そもそも・・ここ、いったいなに!?」
クリース「ちょ、ちょっと待て、落ち着けってば!」
ここはどこ、ではなく、ここはなに、と聞いてしまうほどの世界。
さっきまでの戦いはカケラもなく、
そこはどうやらどこかの城の中庭のようで、
小鳥が飛び、花が咲いている。
キノール「まさか」
その顔が、さあっと青ざめる。
キノール「・・ここもしかして、天ごk」
ターベル「縁起でもない!あいにくだけど、オレたちの脈は正常だし、魂だけの存在にもなってない。
天国じゃないのは確かだけど・・オレにも、なにが起きたのかさっぱり」
クリース「さっきの爆発の衝撃で、なにか起こったんだとは思うけれど・・。
とにかく、みんなを探さそう。この変な所から、早く闇の宮殿に戻らなくちゃ」
キノール「うん・・」
ステージ7−23 ローズマリーの夢の世界 2
ウィッシュ「もう、やだ・・。この星々の国で、なにもできないで見てるだけなんて!
あたしにも・・なにかあたしにも、できる事は・・・・・。そうだっ!」
ぱん、と手を打って、あたしは一目散に図書館へ走り出したの。
本当は広間に戻って、あたしが飛び出した後、どんな会話が交わされたのかも知っておきたいけど。
今はこっちが先決!
もし、あたしの推測が当たってれば・・・とっても大切な事だもの!
・・バタンッ!
ウィッシュ「・・あった!」
あたしが図書館で探しだしたのは、この間の紙切れ・・そう、本のなだれで見つけたやつ。
ウィッシュ「よおし・・。なんとかして、これを解読してやるわあっ!!」
・・バタンッ
スターライト「・・ウィッシュ?なにしてるの、こんな所で?」
ウィッシュ「あ、スターライト!ちょうどよかった!」
ラッキー!
スターライトが来てくれたッ!
この子、星の子のくせに、けっこう頭がいいんだよね。
・・手伝ってもらおうかな。
ウィッシュ「スターライト、ほらこれ!この間、本のなだれにあった時に見つけたやつ!
どうしてもこれを解読したいの、手伝って!・・というか手伝うのよ!」
これ・・姉さんたちにも、読めなかったけど・・
絶対にこれは、プレア姉さんが持ってるこの国の伝説を語る本の1ページ!
以前、プレア姉さんが言ってたもんね、ページが破けてるって。
あたしの推測が正しければ・・。
多分、その本の挿絵と、このページの絵がぴったり合わさると思うもの!
スターライト「えええええ!?ボクも!?」
ウィッシュ「文句言わないのっ!ほら、辞書と羽ペン、持ってきて!」
もしかしたら、その伝説の続きに、なにかみんなの役に立つ事が書いてあるかも知れないし。
今のあたしにできるのは、これくらいだもの。
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キノール「・・見つけたっ!!みんな、テレックがいたよーーっ!」
ターベル「本当か!?よかったー・・で、やっぱり気絶してる?」
キノール「うん、してるみたい。ちょっと待って、今起こすから・・」
クリース「・・ねえ」
キノール「なに?」
クリース「あれ」
二人「あれ?」
クリースの視線が指す先を指でたどると、
・・見つけた。
木に引っかかって、気絶している者が約一名。
クリース「・・どうリアクションするべきかなあ」
ターベル「ボケかましてる場合じゃないだろ・・しょうがないな・・そらっ!」
ドカッ・・ドサッ!
テレサル「・・うわあっ!?」
テレック「うわっ!!・・重っ!?」
ターベル「あ・・ごめん!テレサル落とす場所まちがえた!」
テレック「な・・、なにがどうしたんだ・・?
光の魔法を使っちゃったから、気絶しただろう事はわかってるけど・・」
キノール「僕らも知りたいよ・・」
まだ状況がのみこめないテレックに、キノールがぼやく。
その直後、場違いな約一名が口を滑らせた。
テレサル「ちっ・・やっかいな事になったなぁ・・」
ターベル「は?」
テレサル「今は、お前らと遊んでる時間はないんだ!後は自分でどうにかし・・」
・・ガシッ
テレサル「・・ろ・・あれ?」
さっさと飛んでいこうとするテレサルの後ろを、
怪力にものを言わせて、
テレックの方を向いたままキノールがつかんでいる。
そしてゆっくりと、テレサルに向かって顔を向ける。
キノール「・・何か知ってるんだ、テレサル?なら、言うまで放さないよ。
油断したのが落ち目だったね」
テレサル「・・ふんっ、これでオレを捕まえたつもり?話す事はなにもな・・いっ・・からなっ!放せよっ!炎のま・・」
キノール「・・この距離で使うと、多分、テレサルにもダメージが来ると思うよ」
テレサル「卑怯者ーー!!」
キノール「・・テレサルにだけは言われたくない・・」
ターベル「—ま、キノールの怪力から逃げるのは、魔法なしじゃ至難の技だぜ?
とにかく、ここがどこか、知ってるんなら話してくれ」
テレサル「ちっ・・。ああ分かったよ、言やあいいんだろ。ローズマリーの夢の中の世界だよ、ここは!
言ったんだからさっさと放せ!
オレは、こんなところでグズグズしてる場合じゃないんだよね!」
テレック「夢の中・・!?」
キノール「さっきの、夢の魔法の暴発が原因・・?」
ターベル「・・じゃあ、クリスケとカーレッジは・・」
テレサル「そんな事知るか!」
キノール「・・じゃ、もうひとつ聞くけど。どうすればここから出られる?」
テレサル「そいつにとって、扉となる物を見つけるんだよ!
もういいだろう、いいかげん放せ!」
キノール「いい?」
クリース「・・多分、そいつも知ってるのはそのくらいだろ。放していいよ」
キノール「それなら」
パッ・・
テレサル「・・バカめ!雷のまほ・・」
テレック「雷の魔法よっ!」
バシィンッ!
テレサル「・・うあっ!」
テレック「・・お前の考えてる事は、たいてい分かりやすいからな」
テレサル「・・ちっ、もとの世界にもどったら、必ず叩きのめすよ!」
ヒュン・・
ターベル「・・行っちゃったよ」
クリース「まあ・・だいぶ、分かったし。テレサルの言う事が本当なら、
『扉となる物』を探さないといけないみたいだね。さあ、出発しよう!」
テレック「・・ごめん、気絶から覚めたばっかで、いまだによく状況が・・」
キノール「歩きながら話すよ。早く、元の世界に帰らなくちゃ・・!」
ステージ7−23 ローズマリーの夢の世界 3
その頃、現実世界・・。
クリスケ「みんな、扉となる物を見つけたかなあ・・」
国王「見つけたら帰ってくるんだから、まだだとは思うが・・。まいったな・・。
全員が夢の世界から戻らないと、ローズマリー様の意識も戻らないし。
今、もし魔物が襲ってきたら・・」
クリスケ「うわ・・っ想像したくない」
しばらく沈黙が続いた後、
ため息と共にクリスケが口を開く。
クリスケ「・・みんなと連絡がとれればなあ。夢の中じゃ、テレパシーも届かないだろうし」
国王「テレパシー・・?・・!それだ!」
ぱん、とカーレッジが手を打つ。
クリスケ「・・え?だからさ、いくらテレパシーでも夢の中まではむ・・」
国王「これがあるだろ」
ひょい、と服の間から持ち上げて見せたのは、藍色に輝くスターペンダント。
クリスケ「つ・・使っちゃうの?」
国王「確かに、力がバレる危険性はあるけど。今はそれしか方法がない・・。
二人分のスターペンダントの力を合わせれば、夢の世界にもテレパシーが届くかも知れない」
クリスケ「・・分かった。やってみる」
『星のように輝く勇気よ、今この時再び輝きを得て、我の力となれ!』
『大空のように果てしない心よ、今この時再び輝きを得て、我の力となれ!』
・・カッ!パアアアアアア・・・!!
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ターベル「扉となる物って言ってもな・・。こう広いと、なにがどこにあるのかさっぱりだ。
ましてや、さっきから扉なんて一つもないし」
クリース「扉となる物・・。ねえ、テレサルは、『扉』じゃなくて、『扉となる物』って言ったよね?
じゃあ・・なにか別の物って可能性もあると思うよ」
テレック「なるほどな・・。でも、今はクリスケとカーレッジを探すのが先だ。いったいどこに・・」
その時、一つの声が聞こえた。
『・・な・・。み・・な・・』
クリース「・・・?今、なにか聞こえなかった・・?」
キノール「・・しっ!これ、もしかして・・」
『み・・な、みんな、聞こえるっ・・?』
キノール「クリスケだっ!クリスケのテレパシーだよっ!」
ターベル「クリスケ、今どこに・・」
『オイラと・・カーレッジは、現実・・世界にいるから、待ってるから・・早く、扉と・・る物を、見つけて・・!』
クリース「扉・・クリスケ、扉となる物って、いったい何なんだい!?」
ターベル「扉そのものじゃない・・んだよな?なにか、世界をつなぐ物とか?」
『その人が・・の・・で、自分も気づかないような場所で、・・・て・・る物が・・扉になるんだ。
それを・・・た時、現実・・帰ってこられるはずだよ!』
テレック「え?ちょ、ちょっと待て、肝心な部分が聞こえないって!」
『待ってるから・・早く、見つけて・・』
フッ・・
ターベル「あーーーっ!!テレパシー通信切れやがった〜〜っ!!」
テレック「か・・肝心な部分が、切れ切れでわからなかった・・」
キノール「・・とにかく、二人は無事で現実の世界にいるみたいだね。
うーん・・。結局、何なんだろ・・扉って・・」
クリース「とにかく、探すしかない・・・・今度は、こっちの・・裏庭の方、探してみる?」
キノール「・・そだね。じゃ、行ってみ・・」
その時、言葉をさえぎるように、ものすごい強風が一帯を走りぬけた。
・・ゴオオオオオッ!!
クリース「・・!?」
ターベル「わ・・な、なんだ、この風ッ!?」
キノール「あっち・・裏庭の方!行ってみよう!」
タタタタ・・
胸騒ぎがするのは・・どうして?
ステージ7−23 ローズマリーの夢の世界 4
ふう、と息をついて、クリスケが顔をあげ、つぶやく。
クリスケ「—…通じたかな」
国王「さあ…通じたことを祈るしかないな」
クリスケ「通じてるといいんだけど。オイラも、テレパシーを送るのでせいいっぱいで、
みんなの声がほとんど聞こえなかったから・・・こういうメッセージを送ったら、
みんながどんな風に反応するかな、って先読みして一方的に送っただけだし」
国王「今は・・みんなを、信じるしかないさ」
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キノール「この角の向こう側・・あそこだ!ここの、通路からいけるみたい!」
風の吹く方向を見つめてキノールが指差したのは、秘密の抜け道のような、緑のしげった通路。
その奥から、風はものすごい勢いで吹き荒れ、ようやくとまった。
ターベル「行くぞっ!」
タタタタ・・
キノール「——なんでだろう、すごく嫌な予感がするんだけど。
なんか・・怖いんだけど、なんでだか・・」
不安そうにつぶやくキノールに、クリースが答える。
クリース「ああ、私も・・。体の奥で、本能が『行っちゃいけない』って叫んでる気もする・・
理由は分からないが・・」
ターベル「——なにびびってるんだよ、二人とも。今まであれだけ大変な目にあってきたんだ、
これ以上怖いことがそうそうあってたまるか」
テレック「——視界が開けるぞ!」
指差した角を曲がり、
勇者たちは立ち尽くした。
壊れ、崩れようとするツリーハウス、
そのツリーハウスに攻撃を仕掛けている、空に浮いたひとつの人影、
ツリーハウスの中にいる人影・・
バシイイイッ!
ガラガラガラッ…!!
『うわああっ…!』
キノール「な…っ!?」
バキバキ・・バキィッ!!
ターベル「な・・なんだ、どうなってるんだ!?」
テレック「リームが悪夢でも見てるのか・・!?」
クリース「——違う、これは・・!」
『うわっ・・!』
『危ないっ、フィール!カーレッジ!!』
『・・風よ、我に力を——…!!』
ターベル「カーレッジ・・だって!?」
クリース「まちがいない、クリスケの言ったとおり、これは・・リームの夢だけど、ただの夢じゃない・・!
過去の出来事を、夢として見ているんだ・・これは、私たちの前世の戦いの様子だ——…!!」
ステージ7−23 ローズマリーの夢の世界 5
ターベル「じゃあ・・、じゃああれは、前世のオレ達ってこと!?」
クリース「そうだと思う・・!」
ターベル「そんな・・っ!」
戦う、以前の自分たちを振り向く。
今の自分たちは知っている。
この戦いの結末を・・
テレック「・・危ないっ!!」
キノール「女王の雷が・・!あの人に!」
テレック「氷の魔法よっ!」
高い音と共に生まれた氷の盾は、
確かに女王の放った雷を受け止めたように見えて・・。
そのまま雷は、盾をすり抜けた。
・・バシイィンッ!
テレック「なっ!?」
キノール「ええっ・・どうなってんの!?」
クリース「夢・・これは、リームの夢の中だから、
私たちがなにをしようと、どうすることもできないんじゃ・・!?」
ターベル「ウソだろ・・。
じゃあ、前世の自分たちがやられるのをつっ立って見てるしかないってわけか!?」
悔しそうに、クリースがうつむいた。
ターベル「くっそお・・っ!」
その時、一つの悲しそうな呼び声が響いた。
『ローズマリー女王様・・っ!』
キノール「——この声・・?」
その声に、キノールが耳を澄ませる。
『どうか、元の心を取り戻してくださいっ・・!』
キノール「これって・・」
——…僕の声?
キノール「あれ・・あの人、僕—…!?」
女王の声が、淡々と続く。
『その者はもう存在しない・・忠誠を尽くしていた者から死の裁きを受けるがいい!』
『悪いが・・そんな気はさらさらないなっ!』
・・ガッ!!
『・・じゃまだ!』
バシイインッ!
『うわっ!!』
ターベル「うわっ!?」
その人の悲鳴と共に、ターベルが足を押さえる。
ターベル「なんだ・・!?」
テレック「どうした?」
ターベル「あいつに雷がかすった所と、同じ所に急に痛みが・・」
『このやろう・・っ!!
女王様を・・ローズマリー様を返しやがれっ!』
テレック「(あいつ、絶対に前世のターベルだ・・!——あの目・・!)」
強い意志を秘めた瞳。
たとえ命が脅かされても、
何があっても悪に屈しない前を見つめる瞳。
ターベルと同じ輝きを放つ瞳—…。
・・タンッ!
そして、一人の青年の踏み込みと同時に、一人が両手を突き出す。
・・キィーンッ!
『・・!?』
『みんな、今だっ!』
ターベル「あいつ・・超能力を使ってるって事は、クリスケか!?・・って、なんだああ!?」
女王の周りを、影が、闇が渦巻く。
クリース「無敵状態・・!?」
『・・覚悟するがいいっ!」
キノール「ああ・・」
負けることは、もう知っている。
それでも。
キノール「——負けないで——…!!」
ステージ7−23 ローズマリーの夢の世界6
テレック「無敵って・・そんな展開アリか!?」
クリース「待って・・見て!あれ・・多分、クリスケの前世の人が・・!」
彼は、スッ、と人差し指を女王に向けて、
切り裂くように天に突き上げる。
『・・ええーいっ!!』
・・キィイーンッ!!
『あそこだっ!』
・・シュンッ!
キノール「すごい・・超能力でバリア消してる・・!」
バシイィンッ!
『うわっ・・!』
ブンッ!—ガキインッ!
『おのれ・・!』
ターベル「よっしゃ・・チャンスだ!ああ、オレが攻撃できれば・・こうやって回り込んでっ、
こう飛んでっ、回し蹴り見舞ってや・・」
テレック「だからっ!オレ達には今どうしようもな・・」
その時、一人の人物が、
ターベルがまくし立てたのとそっくり同じコースをたどり、女王に回し蹴りを食らわせた!
『・・はああっ!』
ガスゥッ!
ターベル「・・!?あいつ・・今、オレと同じこと考えて・・!?」
テレック「まちがいない、あいつ、お前の前世の姿じゃないか!?声とか性格とか、瓜二つだぞ!」
ターベル「あいつが!?」
クリース「・・いけない!!」
二人の耳に、クリースの声が届く。
慌てて振り返ると、女王がまたも影バリアを作ろうとしている!
キノール「今のあの人・・クリスケの前世か・・あの人には、もう一度バリア壊すのなんて無理だよ・・!
すっかり消耗してるのが丸分かりだし!」
クリース「って事は、前世の私たちはここで敗れたのか・・!?」
テレック「待て・・違う、・・だめだっ!!」
『・・この際、しらみつぶしで葬ってやろう!・・蔓よ、やつを押さえろ!』
—ビッ!ビュルルルルッ・・!
『・・うわっ!?』
ターベル「黒いツル・・!?」
『・・はなせっ!』
キノール「・・あのツル、どこかで・・?」
呟きながら、無意識に右腕に手を置く。
前世の戦いでついたとカーレッジから聞いた、古い傷跡を。
その時・・
『愚か者め・・!』
女王が、腕を振りあげた。
その振りあげかたは、広間でのテレサルの手の動きと同じだった。
勇者たちの脳裏に、ローズマリーの言葉がよぎる。
—あいつのエアカッターと同じもので、私は・・っ!—
クリース「エアカッター・・まさか!」
女王が、風の刃を放つ。
『フィール・・危ない、早く、早く逃げてっ!』
『・・え?』
キノール「そんな・・クリスケ!」
『・・うわあああっ・・!』
テレック「ちくしょう・・っ!!」
その時。
その脇を、誰かがものすごい速さで走りぬけた。
ターベル「なっ!?」
『フィールーーッ・・!!!』
そして、彼はエアカッターの前に立ちはだかった。
彼のその、藍色の強い瞳は・・
クリース「——カーレッジ!?」
ターベル「まさか・・そんな——っ・・!!」
・・ザアアアアッ・・!!
ステージ7−23 ローズマリーの夢の世界7
一瞬、時間が凍りついた。
その一瞬は、まるでスローモーションのようで・・
・・ドサッ
『カーレッジーーッ!!!』
ターベル「あんのやろうっ・・!雷の魔法よっ!!」
バシイィンッ!!
クリース「だめだ・・攻撃もすり抜けてる!」
ターベル「だーーっ、もうっ!!なんでこんなときにオレは何もできないかなあ!!
前世のオレッ!頑張れっ・・!!」
ドッカアアアンッ!
『・・!?』
『女王よ・・カーレッジ達に手を出したら、この私お手製の爆弾をもう一発お見舞いしますよ!』
クリース「・・ナイス!」
『フィール、フィール、カーレッジの手当てを!早く!』
テレック「とにかく今は・・あの二人から女王の攻撃をそらせな・・」
『火よ、風よ、我に力を!炎の壁となり、悪しき物を阻めっ!』
ゴオオオオッ・・!!
テレック「同じこと考えてる・・」
『こしゃくな・・
ならば、お前達から先に葬ってやるわ!・・出でよ!』
振り上げる女王の腕にあわせ影を切り抜いたような手が現れ、振り上げ、振り下ろし・・
・・バシッ!!
『カインドッ!!』
ふっ、と女王が冷たく微笑む。
『一人ほうむ・・』
『・・勝手に殺すんじゃない』
『・・!?』
ぐぐ・・
正面から女王の手を受け止めたカインドが、
ゆっくりとそれを押し返す。
クリース「すごい・・!あれって・・!」
キノール「うん、多分・・僕」
『僕のこと、甘く見てたんじゃないの・・?カゲの女王・・
ローズマリー様を・・カーレッジを・・よくも・・——はあっ!!』
ブンッ!!
『今だっ・・シェンス!』
『ああ!援護頼むな、フォース!』
『風よ、我と彼に力をっ!』
巻き起こる風に乗って、宙から蹴りを食らわす。
ターベル「よっしゃあ・・行けっ!!」
『・・くらえっ!』
『・・見くびるな!!』
バシイィンッ!
『・・うわっ!』
『この愚か者たちが・・食らえっ!』
バンッ!!
女王が手をたたき合わすのと同時に、
黒いツルがまっすぐにカインドへ向かう。
ビシィッ・・!!
『つっ・・!!』
キノール「あいた・・っ!!急に、右腕がっ・・!」
クリース「その古傷・・じゃあ、あれが原因!?」
キノール「多分・・」
『カインド、大丈夫か!?』
『・・それは、その者の力を少しずつ奪い、最後には死へむかう羽目になる魔性植物。
お前のバカ力でも、それは外せない。さあ、次は・・お前だ』
浮き上がったカゲの手が、
女王の指差すままに向かう。
クリース「・・っ!」
ドカアッ・・!
『うわああっ!!』
クリース「このアザ・・あれか・・!?」
『ウィズ、大丈夫!?』
『このやろ・・』
『・・他人の心配をしている場合か?』
その言葉を聞いたとたん、
これから起こることを思い出して・・
ターベル「だめだ———・・っ!!」
『・・なっ・・!』
バシイィンッ!!!
ターベル「うわあっ・・!!」
『シェンスーーッ!!』
その声が、耳に突き刺さる。
以前から、ずっと、ずっと、呼ばれていた名前・・
そして、目の前の自分は・・。
・・ドサッ
彼が倒れた瞬間、ターベルは目を見開き、
口を開いた。
ターベル「・・っ!!」
・・パンッ!
テレック「なっ・・!?」
——消えた!?
音と共に、彼の姿は消えていた。
クリース「もしかしたら・・。現実へ戻ったのか!?」
テレック「な、なんで急に・・!?」
クリース「わからない・・なにか言おうとしてたけどっ・・!」
キイイィーン・・!
ビシイイッ!
『カインド、今だ・・!って、・・どうしたの、その腕!?』
キノール「(右腕が・・すっごく痛い・・!あのツルのせい・・!?)」
『呪いらしくて・・。・・ごめ・・んね。もう・・だめみたい』
ドサッ・・
そして。目の前の自分は、倒れた。
キノール「な・・」
『うそ・・うそだよ・・こんなの・・!しっかりして・・カインドーーッ!!』
そしてまた、彼も。
名前を叫ばれたとたん目を見開き、消えた。
テレック「どうなって・・」
クリース「分からないけど・・!ああ、もう、さっきからアザが痛いし・・!」
『くそっ・・風よ、我に・・』
『愚か者』
『なっ・・』
ふっ・・
フォースの背後に、カゲの手が浮かぶ。
テレック「やばいっ・・!!
——あの手は・・あの振り方はっ・・!!」
振り向いたときには・・
ゴオオオオッ・・!!
『うわああああっ・・!!』
ドサッ・・
『フォース・・フォースーーッ!!』
テレック「フォース・・!?」
叫ばれた、その名前。
とたん、頭の中にさまざまなシーンがよみがえる。
テレック「・・っ・・!」
パンッ!
『ウィズ、盾を・・ウィズ!?』
『・・すまない、さっきの・・カゲの手のダメージが、今、さら・・』
ドサッ・・
『・・うそ・・うそだ・・。嘘だよーー・・っ!!!ウィズーーッ!!』
クリース「ウィズ・・そうだ・・思い出した、全部・・!!!」
パンッ!
・・そして。
過去は、繰り返されて・・。
『・・闇の呪いよっ!!』
バシイイイインッ!
ステージ7−24
国王「もうすぐ真夜中か・・」
空にかかる満月を見上げて、呟く。
クリスケ「カーレッジ?」
国王「ああ、フィール・・、みんなはどうしてる?」
クリスケ「だめ、目が覚める気配なし。ただ、うなされてるみたいで・・」
国王「うなされてる・・?」
クリスケ「うん、そう。ローズマリー様、悪夢でも見てるのかな・・」
国王「とにかく、無事だといいんだけれど・・今は、なりゆきに任せるしか・・」
二人が同時にため息をついた、その時。
ターベル「——・・思い出したあああっ!!!」
がばっ!!
クリスケ「うわあああっ!??」
国王「タ、ターベルッ!?気っ・・気がついたのか!?」
ターベル「・・はっ!?こ・・ここ、現実世界・・!?」
クリスケ「び・・び、びっくりしたなあ、もうっ!」
ターベル「そ・・それどころじゃないっ・・
夢の世界で、目の前のオレが倒れて、それで、記憶がっ・・」
国王「ちょ・・ちょっと待て、落ち着けっ!今・・記憶がどうとかって・・」
ターベル「そ、そう、それ!ローズマリーが・・ローズマリー様が、
オレ達の前世の戦いを夢に見ててっ、それで・・カーレッジが、オレが・・倒れてっ・・名前が・・」
クリスケ「ス、ストップ!落ち着い・・」
その時、キノールが跳ね起きた。
キノール「シェ、シェンス!?それにみんなもっ・・こ、ここ・・元の世界っ!?」
ターベル「カインド!お前もっ・・」
クリスケ「シェンスに、カインドって・・
その名前・・二人とも、記憶が・・戻ったの!?」
キノール「う、うんっ・・ツルの呪いで・・僕が倒れて・・
それで、フィールが叫んで、その名前を聞いたら、
ぱあって思い出した。それで次に気がついたら、ここに・・」
ターベル「オレも、女王の雷に打たれて・・て、そうだっ!ウィズとフォースはっ!?」
テレック「うわあああっ!!!」
クリスケ「わああああ!?」
キノール「フォース!フォースも!?」
クリスケ「ま・・また!?驚いたなあ、もうっ・・」
テレック「みんなっ・・、オレ達・・戻ってきたのか!?なにがどうなって・・
記憶が戻って、そしたら、急にっ・・」
クリスケ「ま・・待って!今、説明するからっ・・。あのね・・」
ガバッ!
クリース「・・・っ!!!」
テレック「ウィズッ!」
クリスケ「ちょうどよかった!・・ウィズ、今、説明するから・・。
あのね、夢の世界から戻る扉は・・て、
オイラ、テレパシーでそこらへんを伝えたと・・」
テレック「いや、肝心な部分がほとんど聞こえなかった」
クリスケ「あちゃあ・・じゃ、今説明するよ。夢の世界からの扉となるものは、『忘れ物』だよ」
キノール「忘れ物・・?」
クリスケ「その人が、遠い昔に失ってしまったもの・・。忘れてしまったもの、っていうのかな?
幼いころの夢とか、不思議を信じる心とか、思い出もそう」
国王「それを探しているとき、人は夢の世界へ飛びやすくなってしまうんだ。
私たちが飛ばなかったのは・・その、前世の記憶が戻っていたからかと。それで、みんなは・・
自分の気づかない所で、その前世の記憶や名前を探していたのかもしれない。だから・・」
キノール「僕らは、夢の世界に飛んだ・・?」
クリスケ「うん。それで、夢の世界でその忘れ物を・・前世の記憶を見つけたから夢の世界の扉が開いて、
みんなは戻ってこれたんだと思う」
テレック「じゃあ・・ちょっと待ってくれ。それじゃ、テレサルも・・忘れ物を探して?」
クリスケ「うん・・多分。そのことなんだけど・・テレサルの目が覚めるのが、いつになるか分からないから・・。
みんなとは別行動してたんだろ?」
テレック「ああ・・」
クリスケ「それな・・。・・!?」
途中で言葉を切って、あわてて振りかえり、叫んだ。
クリスケ「・・やばい!今は、逃げなくちゃ!!」
クリース「えっ!?」
クリスケ「魔物が、魔物の気が、近づいてきてるっ!吹き飛ばされた魔物たちが、戻ってきたんだっ!
ローズマリー様を連れて、逃げなくちゃ・・っ!!」
キノール「じゃあ僕が・・あ、ちょ、テレサルどうする?」
ターベル「あいつら魔物がどうにかするだろっ!この状況でまた一戦交えるのは不利だ、走れ!」
キノールが気絶したままのローズマリーを抱え、走り出す。その中で、テレックが叫んだ。
テレック「ここまで来たら・・行くしかないっ!みんな、そこの通路を降りろっ!」
クリスケ「こ、この道!?」
テレック「その先・・真っ直ぐ進んでくれ!そうしたら、白い塔がある・・その先に、カゲの女王がいるはずだ——・・・!!」
ステージ8へ・・・。