「——— ………」







「———— ……………?」








「…………」




「————、——、——— ……——、—— …………、……………」






「………  」




「    」










( ミ ラ )


















( どこ……!? )














歌と音楽さえも取り上げられたクレスは、まるで気も狂わんばかりだったよ。
しばらく呆然と立ち尽くしてから、
どう足掻いても自分の声が出てこないことを悟ると、今度は必死でミラを探し始めた。
目の前で消えたことくらい分かっているはずなのに、
何処かに置いてきてしまったんじゃないかと、真っ白な世界を走り回って探し回って。
旋律を奏でる為の指を真っ赤にして、白い地面を引っくり返すように引っ掻いていたこともあったっけ。
何処かに埋もれてしまったんじゃないかと、思ったんだよ。
……そんなはずはないのにね。


彼の歌は、現実世界と自分の夢の中を繋げる唯一の扉なんだ。
歌うことが出来なければ、この世界は本当に閉ざされてしまう。現実の時間の流れからも切り離される。
今までの唯一の喜びだった、歌を聞いてくれるお客さまも、
クレスが歌をうたうことが出来なければ、彼の元へ行くことは出来ない。
…それはつまり、彼が本当に本当の、無の夢の中に閉じ込められてしまうということ。





そして——
どんなに探しても、何処にもない、とついに悟るしかなくなった時。










(もしもこのまま歌えなかったら、)

(僕はここに、この世界に、永遠に、ひとり?)





(歌を歌えない僕に、存在意義なんて、ありはしないのに)







(——だれ か )









血が滲むほどに自らを強く抱きしめて、クレスは悲鳴をあげようとした。
たとえ声が出なくても、少しでも感情をなだめようと。
だけどその瞬間、彼は気づいてしまったんだ。

誰か助けて、と叫ぼうとした。
けれど、その誰か、が誰も、本当に、思いつかない、違う、見つけられないんだ。
心の中を捜しまわって、探しまわって——










——彼は気づいてしまった。
自分の心の中には、誰も、本当に“誰も”、住んでいないことを。











その瞬間、クレスの自我は、心は、壊れた。

白い世界に、轟音を立てて、雨が降り始めた。























(「……あ、」)

(「——ようこそ、お客さま!」)
(「こんなところまで来てくれて、ありがとうございますっ」)



(「今日は何を歌いましょうか?」)

(「少年達の友情の物語、甘酸っぱい恋の物語、それとも悲しい別れの歌を……——」)




















(——ああ)

(かみさま、これは、僕への、罰なんですか)




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