『——すごいすごい、お星さまがいっぱいなのだ!
おとーさんおとーさん、あの星は?あの星はなんて名前なのだ?』
『あれは…えーとだな…そう、確か、——…—…… 』
あの時自分はどの星のことを聞いたのだったか、
きっと今の自分は、もうその星の名前を知っている。
でも、あの時の自分があんなにも惹かれた金色の星が、
この広い広い宇宙の中のどの星なのか。
もう、記憶は霞んで思い出すことが出来ないけれど。
『星の光は手紙のようなものなのだ、パスカル。
お前が、じいちゃんに手紙を出したとき、着くまでには時間がかかるのと同じにな』
『ふーん…お星さまもお手紙を書くの?』
『もちろんさ!なんだお前、知らなかったのか?』
『えー、だって、だって、ワガハイ、まだお星さまから手紙もらったことないのだ』
『あー、それはなあ、星はものっすごく遠くにあるからなあ、
ワレワレのところに届くまでもものっすごく時間がかかるのだ』
『じゃあ、いつ?いつくるのだ?』
『…あー…うーん…えーっとだなあ……』
『………』
『……………』
『……とーさん?』
『えーと、あれなのだ、パスカル。
待つだけのもつまんないだろうから、お前の方からも手紙書いてみたらどうだ?』
『えっ?ワガハイにも書けるのだ?お星さまに届くのだ?』
『ああもちろん!書けたらな、とーさんが星のとこまでぱぱっと持ってってやるのだ!
きっと喜ぶぞ、お前が書くんだからなあ』
『うわーあなんだかすごいのだ!ワガハイがんばるのだ!
ねえ、じゃあとーさん、もうかーさんのとこに帰るのだ。ワガハイお手紙書きたいのだ』
『そーかそーか。そうなのだな、母さんも待ってるだろうしな。
でもパスカル、夜更かしは駄目なのだ。明日は遊園地、行くんだろう?』
『あ、あ、そう!そうなのだ!
ねえとーさんとーさん、明日は、海賊船に乗って、それからロケットにも乗って、それから……——』
それが最後の、家族全員での旅行の思い出。
あの旅行、母さんは(もしかしたら父さんも?)本当は父さんと二人っきりで行きたかったんじゃないかな。
なんだか悪いことをしちゃったのだ。
でも、まあ、父さんも母さんも笑ってたし、とっても楽しかったから良いことにするのだ。
あの夏の日から一ヶ月後、
宇宙空軍に所属してた父さんは、ワレワレの星を守るために、行ってしまったのだ。
メテオ迎撃及びメテオス撃破の為に、ジオライトとオレアナが総力をあげて開発した有人兵器、“エスペラント”。
クルー全員は冷凍睡眠で自らの時間を止め、
脆弱なワープ走行機能をようやっと搭載出来たその小さな希望は、何十万光年の彼方へ飛び立った。
通信が途絶えたのは5年前。
到着予定は、一応去年。
だけど、…やっぱり。……うん、もう、みんな、予測してたのだ。
時空間法則を完全に吹っ飛ばして、
メテオスから飛んでくるメテオの襲来は相変わらず、止まらない。
……父さん。
あの時3つだったワガハイには何も分からなかったけれど、
それでもワガハイは、この星を、この宇宙を愛しています。
この手紙はきっと届かないだろうけど、それでも、
ワガハイ、ここに書き残しておくのだ。
こういうことすると、また女々しいとかからかわれるんだけど、まあ、もうしょうがないのだ。
ワガハイ、あのロマンチックな母さんの子だから仕方ないのだ。うん、そういうことに。
父さん、昨日、メタモアークが完成しました。
メタモライト、というかメテオスのおかげで、飛行機能とかワープとかなんか、凄いです。
亜空間飛行とか出来てしまいます。
年配の教授が、最近の物理学の変遷には着いていけんって嘆いてます。楽しそうに。
もし父さんの乗ったエスペラントがまだメテオスに着いていないのなら、途中で追い付けるかもしれません。
あ、そうそう。
なんかもう、形振り構わずお願いしまくったおかげで、ワガハイも、メタモアークに乗れることになりました。
凄く頑張ったのだ、もう。いやあもう。それはもう。
母さんはきっとまた、泣いてしまうけど、でもね、父さん。
ワガハイも、行くのだ。
惑星メテオスへ。