いつもぽやっとした笑顔で笑っていました。
彼女は、子供の時のまま時を止めてしまっているのだと思っていました。
……そうでなければ、成長プログラムの組み込みを何か間違ってしまったか。
いつも幸せそうに笑っていて、
いつも人に優しかったから。
そのプログラムの配列はいったいどう決定されたのだろうと思っていました。
(その0と1で描かれた魂はきっと廃墟のように美しかったに違いないと
もしも私に「魂」という言葉がプログラムされていたら思考したに違いない)
変化は突然でした。
ある日、いつものように私が彼女のアドレスへアクセスすると、
そこには誰もいなかったのです。
私は待ちました。
しばらくすると、突然、彼女が飛び込んできました。
いつもの、ふわっとした淡いグレーのワンピースにまったく似合わない、
恐ろしく、張りつめた、氷のような表情をしていました。
私と目が合うや否や、悲鳴をあげました。
「なにもない」
って。
次の日、彼女はシューアサイドしてしまいました。
そんなことしたって、すぐに、バックアップから復元されてしまうのに。
再会した彼女は、全くもとどおりの、ぽやっとした、幸せそうな少女でした。
もう果たしたはずの、映画を見に行こうという約束を、笑って口ずさんでいました。
2か月たって、彼女はまた豹変し、いなくなりました。
復元されました。少しだけ笑顔が少なくなっていたような気がするんですが、きっと誤認識です。
また2か月たつと、いなくなりました。
次に復元されてから1か月と29日後、彼女は何故か、いつもより早くバックアップを更新しました。
そして次の日、いなくなりました。
復元された彼女は、もう、ぽやっとした顔で笑ってくれませんでした。あの氷みたいな目をしていました。
まるで、何かから逃げようとでもしているみたいでした。
それで——もう復元する係の人もうんざりしていたんでしょうか——。
データバンクに違法アクセスすると、自分のバックアップを、全部消しました。
そして、彼女はもう二度と、帰ってきませんでした。
私は全部見ていたんです、ドクター。
あれ以来、思考プログラムがしょっちゅうフリーズしちゃうんです。今も正直…ちょっと……。
どうしてなんでしょう、ドクター。
彼女に一体何があったんでしょうか。何が無いんですか。無いものは描けばいいだけなのに。
私にはわからないんです。ドクター。エラーが起こりすぎて、処理速度がどんどん落ちてくるんです。
どうすればいいんですか?
……修復プログラム? 構成してくださるんですか?
ありがとうございます——スリープモードに? わかりました——変なデータ覗かないでくださいね…?
え? ……彼女の名前ですか?
私は…。私は、アルナって呼んでたんです。彼女のIDは0137ARu7aだったから…。
でも…最後に、一番最後に会った時、私が彼女を呼んだ時、あの子、言ったんです。
「私はアルナじゃない。サーシャ、もう二度と、私を呼ばないで」
って………
どうしてなんです…か…ドクター……あの子は……わたし…
わたし……は……………
ワイヤロン星立プログラム修復センター
400年前の破損したカウンセリングデータより復元
患者のスリープモード強制移行後のデータ削除についての資料は紛失された模様
また、患者は現在ワイヤロン星に存在しない為確認は不可能
補足
データ中の「アルナ」のIDについては恐らく患者のメモリーに破損があったと推測
(ID0137ARu7aのワイヤロンは存在しない為)
アガルタ捜索資料より抜粋
文責 ID0012Be5a
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