君はきっともう帰ってこないよ。
泣きそうな顔で言う彼に、可愛いと言ったら、怒られた。
人のほとんど来ない、海の終わり。
大洋に忘れられたかのような小さな島の浅瀬に、一人きりで住んでいる、変わり者の男の子。
海が怖いと彼は言うの。
空のが好きだと彼は言うの。
ぽおっと夢見るみたいな目をして、
俺、生まれ変わったら、せめて飛魚になりたいなぁ、なんて呟いちゃうような男の子。
ある嵐の日に、うっかり潮に流されてしまった私を助けてくれたのが彼だった。
少しだけ溜息をついて、彼はもう一度言った。
どうしても行くのか。
私は頷く。
彼は俯く。
そして、彼が差し出したのは、星の砂を詰めた小瓶だった。
傾けると瓶の中でしゃらしゃらと鳴る。
彼の大好きなお日さまに透かしてみると、
女神の櫛や提灯貝の小さいのも一緒に、きらきら光った。
お守り。
消えそうな声で、彼はそう言った。
ああ、私、今、ひどいことしてるなぁ、と思う。
でもごめんね。どうしても、止められないの。
大丈夫、と私は笑った。
飛魚のアーチをくぐって宝島に辿り着いても、
私は必ずまた帰ってくる。
ほんとだってば。
ねえ、泣かないで。
謝らないで。
私の友達は、私に向ってぐっさりと、あんな男のどこがいいの、なんて言う。
騙されてるんじゃないの、なんて言う。
そして彼もまた、こんな俺のどこがいいんだ、って心から不思議そうに言う。
その度に私は、そんなこと言わないでって怒らなきゃいけない。
みんな何も分かってないんだから。
貴方の傍が結局一番安らげる。
ただ、それだけなのよ。
君は怖くないのか?
…怖くないと思うの?不安じゃないと思う?
じゃあなんで行くのかって、聞いてもいいか?
…………。
…それでも行きたいんだよ。
……パアニは強いな。
そんなことないよ。
じゃあ何だよ?
子供なだけ。
なるほど。
帰ってきたら一番に、
この島に私、泳いでくるわ。
その時、もし気が向いたら、待ってて。
…絶対待っててって言わないんだな。
……だってなんか、そういうの言うのかっこわるいじゃない。
俺、言いまくりだ。
カイは良いの。可愛いから。
———はぁ……。
海に沈む夕日も、浪間から昇る満月も、
その光が身体に触れるのが分かるほど、とてもとても綺麗な日。
一緒に歌を歌って、鼓動が聞こえるくらい寄り添って、空を見上げて。
「——Mahalo, Kai」
「………」
…ねえちょっと、お別れの挨拶は?
「——No na kau a kau
「「Aloha au ia`oe」」
オレアナのメタモアーククルー達を乗せた高速宇宙船が、
ジオライトへ出発するまで、あと一日。