こめかみのあたりを流れ落ちて行く冷たい汗を、空いていた手で拭う。
 鼓動の音がうるさい。
 巨大物質移動装置の操作パネルと、カラフルでシンプルな記号で埋め尽くされたモニターとを睨みつけながら、ディングは深く息を吸った。

 これで何度目のメテオ襲来だろう。
 そしてどうして、今日、よりによって、この地区のメテオ打ち上げ責任者がメンテナンスオペを行う日に、メテオがやってきてしまったのだろう。
  普段ならば、彼が打ち上げていくメテオを、ただの「いざという時の代理」として見ていればよかった。いざという時なんて来ることを忘れていた。
 肩に掛るものの重みに足が震える。
 出来るだけ冷静に、メテオの塊を効率よく揃えながら、流星を宇宙に返していく。

 ごごんっ、と大きく部屋全体が揺れたのは、その時だった。


「…っ、何事だ!?」

「わ、わかんねえ! なんかいきなりメテオの飛来パターンが変わって…って、おま、頼むからディングお前、前みろ、前ーっ!!」

 振り向いて、メテオが壁のように積みあがっているモニターを見て、愕然とする。
 慌てて単発打ち上げを繰り返しながら、ディングは舌打ちをせずにはいられなかった。

「くっそ…いつまで続くんだ……!」

 落ち着け。冷静に。集中力を失ったらその時点で負ける。
 この星が、壊れる。

「……っ…!」

 ウィンドウが赤く光り始めた。アラートの音が、尚更気を焦らせる。
 このアラートシステム考えた奴くたばりやがれ、と心の中だけで毒づいて、なんとか単発の打ち上げを繰り返していく。けれど、このままじゃ……

「……?」

 ふと。
 飛来してくるメテオの勢いが弱くなったことに気づいて、ディングは顔をあげた。
 操作パネルでもなく、メテオを表示するモニターでもなく、普通の空を映しだす、背景ウィンドウ。
 その空の彼方に、自分たちの星がもうひとつ、浮かんでいた。