【ヒュージィ・ブルー・トパーズ】

大気中の水分を操る力を持った特殊な鉱石。
かつて、ノーヴェ系第5惑星ヒュージィには、
20億前後のヒュージィ・ブルー・トパーズが存在していたと想定されている。
しかし、メテオ襲来によりヒュージィが滅亡した現在では、




開演。



空中には五人の指揮者
爪先の下に台風の眼窩
天より落ちる巌を笑い
銀のタクトを振り上げた


轟き渡る雷鳴のシンバル
弦楽器の五重奏
突風の軋みを絶唱に変え
積乱雲は立ち上がる


「天空のゴーレム!」
「彼の為に!」
「我らは天空の管弦楽団!」
「彼の為に、音楽を!」
「我らのオルケストラを、捧げよう!」


風は竜
大気は剣
指揮が鼓動を操るままに
積乱雲は動き出す

シンバルの鼓動を轟かせ
渦巻く腕が大気を孕む
彼の目が開き
口が開いた

ティンパニの連打
スタッカートの雷光
ヴァイオリンの戦慄は
天駆ける竜に伴いて

空より落ちる鉄槌に
突風の竜炎 虐風の剣戟
積乱雲は絶唱せり
積乱雲の絶唱せり
天空に立ち上がる白銀の巨人
腕を広げ 口を開き
歌声を荘厳な嵐に変えて
空より堕ちる鉄槌に
歌声の剣を振りかざし
五人の指揮者の振るいたる
白銀のタクトに導かれ


「天空交響曲第五番、第四楽章」
「神々に捧ぐ剣の舞」
「星々に捧ぐオラトリオ」
「我らが母たるこの星に」
「騎士の剣を捧げようぞ!」











「なんだいこの本、一番大事なことが書いてないじゃないか」
「アドーネ? リハーサルはどうしたの」
「これから行ってくるよ。その前に君に会いたくて」

輝く銀の髪を括り直しながら、青年は微笑した。
娘が抱えているのは、長い年月に古びた大きな本。
青年がタクトを一振りすると、それはふわりと銀の羽ペンに姿を変える。
許可を求めるように首を傾げると、娘は呆れたように苦笑して、本を差し出した。


好奇心と冒険心に満ち満ちたヒュージィ・ブルー・トパーズ、もとい、
意思と人格、魂を持つ鉱石である我々は、
メテオとの短くない闘争の月日の中で多数が宇宙へ脱出し、
今日日も世界征服の夢を暖めているのである。
ちなみに筆者は自身の宇宙一素晴らしい音楽の才によって華麗なる宇宙征服を成し遂げる予定で



けたたましくドアが開く音。
驚きで飛び跳ねかけた娘の肩を押さえ、青年は溜息をついた。

やれやれ。
今行くよ。