……グランネスト?
ああ、あの、機械だらけの廃墟の星のことね。行った行った、随分前になるけれど、一度だけ行ったことがある。
酷い世界だぜ、大気汚染も最悪だし、温暖化も最悪だし、硫化水素の雨が降ってくるような世界だ。とてもじゃないけど長くはいられない。
けど、そう、ロボットのことが聞きたいんだろう、分かってるよ。ああ、いたさ、うじゃうじゃいた。壊れたのも、まだ動いてるのも。
おっどろいたなぁ、だってさ、お前、1500年なんだぜ。
何がって、お前、その辺動いてるロボットのメモリー引っ手繰って調べてみろよ、どのロボットも1500年以上前からメモリーの記憶が残ってるんだ。
あそこは生きた遺跡だよ。
あ、お、俺、今結構うまいこと言ったんじゃねえ?

……悪い、悪い、そんな顔するなって。
だから、さあ。普通なら、機械が1500年も持つ訳ないだろ?
俺も何か秘密があるもんだと思ってちょっとウロウロしたんだけどよ、びっくりだ、ロボットがロボットを修理してるんだよ。学習能力っていうのか、あれ?
酷くなる一方の惑星環境になんとか耐えようって必死なんだろう、多分。有名じゃねぇか、あいつら、置いてっちまったゴシュジンサマ達をずうーっと待ってるんだろ? 確かそんな本、出てたよなぁ?
ああ、そう、俺、結構博学なんだよ。お前、見くびってただろう。はは、お見通しだよ、そんなこと。

あんたがあの星に行きたいっていうなら勝手だけどなぁ、大変だぞ、そりゃあ。
人、いや、生き物が生きていられる環境じゃねえんだから。
しっかし、あのロボットたちも、健気だよなぁ……。
メテオが降ってくるっていう環境にもとっくに順応して、対メテオ部隊のロボットたちまで自分たちでなんとか改造して作っちまうんだからさ。


……そう、思い出した、俺なぁ、あの星で、すごく悲しいロボットを一台見たぜ。
そいつな、多分、元は遊園地かなんかにいたんだろうな、楽器演奏ロボットなんだよ。
オルゴールの音色が聞こえてきたから、何かと思って見に行ってみたら、そのロボットがな、だーれも聞いてくれる奴なんかいないのに、ずーっと演奏してるんだ。楽しそうな、サーカスで流れるような曲をさ、ずーっと。しかもすげぇ上手いの。
お前、想像してみろよ、1500年だぜえ?
1500年間も、だーっれも聞いてくれないのに、ずーっと、歌ってるんだぜえ?
悲しいじゃねぇかよお、なんでゴシュジンサマ達とやらは、星を捨てる時にロボットの奴ら全員をぶっ壊して終わりにして行かなかったんだろうなあ? なあ、お前もそう思うだろう? ひっでえよなぁ、本当にひっでえよ、しかもあいつら、それを苦痛だなんて感じないんだぜぇ……ひでえよなぁ……ううっ……
……ん? ああ? 酔ってる? 酔ってるかって、何当たり前のこと聞いてるんだよ馬鹿野郎め、さっきから俺がこの手に持ってるグラスと床に散らばりまくりの酒の瓶が見えねえのかお前は? ああ?
くっそお、あんなの、あんなの見ちまったらよお、嫁さんに捨てられようが家なしになろうがさあ、泣こうと思ってもさぁ、あの、死んだ世界で、ずーっと笑顔で手まわしオルゴールを鳴らしてたロボット思い出しちまってよお、ちくしょお……
壊せない……
あんなの、見ちまったら、もう、壊せねぇよなぁ……



——ある掃除屋が物語る