巨大なメインスクリーンを背景に、空色の髪を鮮やかなポニーテイルに括り上げたラズリー艦長が勢いよく手を振りおろす。
それが出航の合図だった。
各自のコンピュータの画面を滑って行く膨大な数字を把握しつつ、時々メモを取りながら、第九天文班のメンバー達は、研究室に据えられたモニター越しに、この船の出航の瞬間を見守っていた。
「大丈夫かぁ最年少。指が震えてんぞー?」
「だだだ大丈夫ですのだ!ちょ、ちょっと…緊張してるだけで」
馬鹿みたいに震えて、上手くタイピングが出来ない指がもどかしくて仕方ないのに、勝手に口角が上がっていく。吐きそうなくらい緊張しているはずなのに、このワクワクは一体何処から来るのだろう。
とにかく観測数値の確認だけでもと、新規のウィンドウをぱちぱちと開く。その矢先、研究室の中を疾風のようにどよめきが駆け抜けた。顔を上げた彼の視界に、研究室の壁の一角を支配する巨大なガラス窓が映る。
ジオライト、オレアナ間の飛行とは比べ物にならないスピードで、星々の光が通り過ぎて行く。メタモアークのスピードに取り残されて、遥か彼方へ消えていく。一瞬遅れてやってきたGに、身体がぐっとシートに押しつけられる。
加速感覚。
何かを吹っ切るように、世界全てが走りだす。
ジェットコースターの急降下で歓声をあげる子供のように、ジオライト研究員たちのやんやの喝采と拍手が、研究室中に鳴り響いた。
「出航なのだー!」
「いいかみんな!スタートリップ中はワレワレの仕事超大量だからな!頑張るのだ!」
「班長休憩いつですか!?」
「交代で取らせるようにするから文句言うななのだ!!」
「ちょっ、と、あの、ジオライトの皆さん席で歓声あげないでくださいよーっ!」
「そうそうそうなのだ!子供のえんしょくじゃないんだからな!」
「班長!噛んでます!」
「えええいしゃべるなぁなのだー!」
鼓動が走って行くのが止められない。
そう、元来、ジオライトの民は祭り好きでテンションが高いのだ。
若干取り残され気味なオレアナ達の溜息を横目に、メタモアーク内のあちこちで同じように歓声が湧き上がっていた。
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