目を開けると、真っ白な空が見えた。
…空? 違う。
空は、濃紺。真っ黒。星が浮かぶもの。
私は瞬きをする。……空に蓋がしてある、ように見えた。

「xxxxx xx xx xx?」

何か聞こえた。
そちらを見る。

「Woh ...」

何かが、触れた。とたんに、聞こえ始めた。

「気が付いた? ……もう大丈夫。大丈夫なのだ」

「…あ、」

ことば。だ。
何故か理解出来ることばたちが、ゆっくりと穏やかに降り積もる。

「だ、れ」

「あ、そうそう、忘れてたのだ。ワガハイの名前はパスカル。
驚かせちゃったらごめんなのだ。ワガハイは、サボン星人じゃなくて……」

「ちが……」

意識が混濁していく。
そうじゃない。そうじゃないのだ。それは分かる、それだけは分かるのに、
ことばが見つからない。

「わたし、…なに?」

「え、」

「わたし…、だ、れ……?」





それきり、また意識を失ってしまったサボンの少女を見つめて、パスカルは絶句していた。
わたしはなに。わたしはだれ。
この言葉が意味するのは、つまり、

「…ま、まずいのだ。ものすごくまずいのだ…!」

慌てて立ち上がった拍子に、パイプ椅子をひっくり返した。肝が縮む。
少女は、瀕死だった。
サボン星人の背に生えているはずの、薄く美しい羽は根こそぎ失われ、体中から出血が止まらない。
サボン星人の身体はとても脆い。傷口を塞ぐ力がとても弱いのだという。
それでも現在まで種族が続いていたのは、彼らの住む星が、とても優しいものだったから…?

身体中を、サボン星人の体液成分にぎりぎりまで近づけた溶液に浸した包帯で巻かれ。
チューブを刺すことすら危険だからと、点滴も出来ない。多分手術も無理だろう。
……かなりの確立で、助からない。



「サボン星は壊滅状態らしいのだ」
「マジかよ? あの、メタモライトが化けた方のサボンは、ひとまず追いやったんだろ?
明日にでも、天文班とか科学班がチーム組んで捕縛しにいくらしいぞ」
「ワレワレがこの空域に着いた時には、もう、何度もメテオが大気圏ギリギリまで積もってたらしいのだ。
その時のダメージが酷すぎて、今、大地震と津波がサボン星中で起こってるって」
「…うわ。こりゃあ、大事だなあ」