差し出されたのは、大きな大きな花束だった。
満開の、虹色の花束。
百瀬の花が、お互いを引き立たせながら、寄り添っている。

ようやっと起き上がれるようになったばかりのサボンの少女は、
突然目の前に咲き誇った花の群れを見て、目を瞬くばかり。
問いかけるように、ベッドの脇に立つパスカルを見上げる。
彼は、花束を持つ女性とお互いに頷きあうと、微笑んだ。

「君が一番気に入った花を、一本、選んで欲しいのだ」

少女は、しばらく考えてから、指先を伸ばした。
そして、一本の花を抜き取る。
柔らかな珊瑚の色。春の太陽のように可憐な、

「アスターの花ですね」

花束を持っていた女性が、微笑んだ。

「私の母星の風習なんです。
生まれたばかりのフロリアスに、花束をあげるの。
その子が、一番最初に触れた花が、
その子にとっての、運命の花」



アスター。
記憶も、名前も、何もかもなくしてしまった貴方に、
せめて、新しい名前を。